浄化する蝦夷の神子・盛城東奈
時は少し遡る
ミヤが多賀城市でトリニティの納車を待っている間…
山形県・鶴岡市
出羽三山神社
奥羽で唯一現代に「修験道」を遺す神仏混交、山脈信仰の社であり、同時に羽黒山・月山・湯殿山、まとめて「出羽三山」と呼ばれるこの山は出羽国の守護神「
飛鳥時代に大和国から逃れてきた
その出羽国の全てが詰まった山、出羽三山の一つ羽黒山では女性を対象とした「神子修行」が行われていた。
紅花色の市松模様をあしらった
その中に16歳の少女がいた。
だが身長は周りの大人達と大差ないのと外見もどこか大人びているせいか、20〜40代の参加者が圧倒的な神子修行者の中でも違和感は無かった。
それどころか心臓破りの2446段の石段を平然と登り、修験修行のメインである滝行と山越えを他の参加者が音を上げる中で東奈だけが平然とこなした。
1番の苦行である「南蛮いぶし」でさえ、東奈にとってはロウリュサウナ程度の暑さにしかならない。
道場・峰中堂
神子修行参加者はここで寝泊りする。
寝る前の語らいのひと時、やはり苦行を苦行ともしない東奈に参加者の大人達の話題が集まる。
「君、10代だよね?どこからきたの?高校生だよね?」
「体育会系〜?」
「盛城東奈でがんす。生まれは気仙沼市だったんだけんど、9年前の東日本大震災で死にそうになったのがきっかけなのす」
「ああ…それは災難だったね…」
「災難なんつぅレベルではねがったのっしゃ!
「そんな事ないよ。そんなに自分を責めないで、ねぇ?」
「そうだよ。あれだけの災害となれば…もうね…」
「非常食も炊き出しも喉通らねぇで
その話を聞いた大人達は“作り話に違いない”と一瞬場をしらけさせてしまった。
だがある40代の女性の口からある言葉が出てくる。
「その宇漢迷公宇屈波宇を降ろしたお婆さん、もしかして「大和宗」の「オカミサン」でしょ?」
「当たり!!でもなして大和宗とオカミサンの存在を?地元でもあんま知らねぇ宗教だぞ?」
「宗教ってより、組織化された青森のイタコの宮城県・岩手県版ね。実は私スピリチュアルオタクでね。日本中のマイナーな地元の巫者を取材してブログを書いてるの!」
「は、はぁ…」
「あなたに興味を持ったわ!もっと話を続けて頂戴!」
「いがんすけどおめさんはどちらから?」
「私は
この2人の出会いが後の戦いを大きく左右していく事になる。
「じゃあ嫌な思い出させて悪かったけど、続き聞かせていいかな?」
「わがりすた。あのオカミサンは高齢だったから、カミサマやってる娘さんの養子になるため青森の津軽さ移ったのっしゃ」
「カミサマ…“ゴミソ”の事ね?」
「んだ?んで青森と言ったらイタコの方が有名だけんども、オカミサンから「おめさんはイタコよりカミサマが向いている。なしてだば宇漢迷公宇屈波宇の霊と一体化しているからだ」と」
「なるほど、理に適った選択ね」
「んで津軽で小学校出るまで暮らした後、オカミサンの紹介で岩手県の平泉中尊寺で得度して僧籍を得ただ」
「ええー!?中学生で!?」
「でもオカミサンなら総本山の一関市川崎町にあるオシラサマで知られる大乗寺では?」
「最初はそのつもりだったのが世界遺産さなった中尊寺で出家すれば箔が付くって…」
「拝み屋稼業も肩書きというかブランド傾向ねぇ…」
「そして今は高校さ行かないで宇漢迷公宇屈波宇との約束を果たすために霊的修行を求めて
東奈がこれまでの経緯を話し終えた。
「なるほどね。3.11でオカミサンに拾われ、ホトケオロシからの魂の融合。貴方には既に守り神がいたのね」
「さて、明日いよいよ帰りだけど私は辛すぎて自殺する気失せたわ…」
「あたしも…今のオカルト話を聞いていたら逆に死にたくなくなってきた…」
「修験道とは、死ぬ事と見つけたりってね…」
東奈と光輝以外の2人が談笑する中、他の参加者達は眠りの準備につき、東奈も光輝も布団に入り、消灯時間を迎えた。
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