断章 廻天・廻廊

 次元の高み、宇宙が分裂し時間が物体として認識できる空間にそれはいる。

 地球の人類から見れば少女と呼ばれる姿をしたその存在は、薄い膜のような宇宙が幾つも並んでいる世界を、縦に貫いている柱のような虹色の光に目を止める。始点を辿れば1つの宇宙層だ。

 その宇宙層のことは少しだけ覚えている。一度だけ、そこの原住民に乞われて助力をしたことがある。ただ、その時に分け与えた力とは別の、それが敵視していた相手に近い光だ。

 宇宙に空いた穴を、その影響で生じた被害を直す一環で少々の知恵を与えたに過ぎないが、なにやら面白いことになっているかもしれない。

 心の片隅に層の場所を留めて彼女は別の宇宙層へと移動する。まだまだ直さなくてはいけない宇宙が大量にあるのだから。

 光の中に紅色の髪が踊った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

堕神録 ー神の巨人と人ならざるものたちー 裏瀬・赦 @selenailur

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ