第9話 空眼《そらめ》

 何度も振り返りながら歩いている人がいたら、しかもその人が後ろにいる誰かを心配しているのではなく空を見上げているのだとしたら、空眼が見えているのかもしれない。見間違いの意で使われる「空目」とは漢字が違うことに注意いただきたい。

「空眼」は文字通り、空にある眼。虚空に眼の表面の形が見える。見えるのは両眼ではなくだいたいが片眼である。電車や車で逃げても空眼はずっと空にある。逃れることはできない。

 昼間に見えた空眼が夜にもまだあったという目撃例があることから、長時間、空眼が見え続けることはあるようだ。それでも、雲が空を覆うと空眼は消える。また、夜もはっきり見えていた空眼であっても、一度、眠るともう次の日には見えないという。

 空眼は気持ち悪いが、それ以外に害は報告されていない。ただの気象現象だという者もいる。

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