新都市伝説

プラウダ・クレムニク

第1話 函入女

「函入女」は地震で家屋に押しつぶされて亡くなった深窓の令嬢が化生したものと噂されている。密閉した室内に現れる。小さな女の子にいっしょに遊ぼうと呼びかける。遊ばないと殺される。ピアノが得意だ言われているが、ピアノの音を聞いたものは帰ってこないという。函を通してなら外部にも移動できる。


「函入女」は男性には近づかない。男性には見えない存在だという噂もある。美人だと言う者もいれば、腐乱死体が正体だという者もいる。人間に執着する(とりつくの意か?)ことは稀で、地縛霊のように建物にとりついている。函のなかにかいられないので掃き出し窓を開けるだけでも消えたことがある。


窓を開けて姿を消すことはできても「函入女」が消滅したわけではない。窓を閉めると復活する。動画配信のため「函入女」が出現する家に車で乗り込んだユーチューバーの女性が自宅に「函入女」を連れて帰ってしまったことがある。密閉した車を函として認識した「函入女」が入り込んだのだ。


「函入女」の噂をすると、宅急便が届くことがある。宅急便のなかには「函入女」の頭が入っていて、「呼びましたね」と言う。次の瞬間には全身が生え揃い攻撃してくる。


「函入女」は密閉された函とみなせる場所には存在できるので、ヘルメットをかぶり、黒い革のライダースーツに身を包んでバイクで出現したことがある。執拗に追いかけてきたというが、転倒してスーツが破けたことで自滅的に消え去った。

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