道ならぬ愛の行く末

非常に胸に刺さりました。
どんなに想いを重ねようと戸籍上の配偶者と恋人の間には歴然とした差があります。
死はその最たるものでしょう。配偶者は妻として夫を看取り、葬儀でもって送り出し、やがては同じ墓に入りと、死してもなお添い遂げる権利を当たり前のように享受します。
一方で恋人は、相手が健康を害しただけで接触すら許されない赤の他人の立場へと一瞬にして転じてしまいます。死は伝達の形でもたらされ、人知れず胸のうちで祈る事しかできません。そこには思いの強さや深さが介入する余地はありません。
そんな無情な関係を緻密な文章で描き出した傑作です。