6日目……?
平日だし、ずっと部屋にいてもアレなのでとりあえず学校に行った。
外では雨が降っている。そういえば梅雨前線がどうとかこうとか言ってたっけ、と一年前を思い返すように記憶を漁った。
いつもと変わらない日。何もなかったかのように一秒一秒が過ぎて行く。
確かに僕は処刑されて、黒いやつに連れ去られて、ゲームは狼の勝利で……。
リアル人狼ゲームと言っていたのに、何故か自分は今此処にいる。ただの夢だったのだろうか。
「晴哉おはよう」
「しょ、章汰!?」
「……どうかした?」
「い、いや、なんにも」
始業前でガヤガヤしている教室には章汰の姿。二度と会えないかもしれないと思っていたので嬉しいが……。
彼の隣で静止していると、突然耳元で声が聞こえた。
「結局、勝敗はどうなったの?」
「え!? しょ、勝敗ってまさか」
「リアル人狼ゲーム。処刑された後、目を覚ましたら今朝で……」
「聞きたいか?」
「うん」
村にとっては喜ばしくない結果に終わった為、一応最終確認をとる。察してくれたようで、真剣な表情で頷いてくれた。
2人だから偶然もあり得るが、やはり夢ではないのか。じゃあ本当になにか裏があるのでは……。
「立花先輩と占いの3人が残って、結局村は負けた。最後は如月さんが感情的になったんだけど、……立花先輩の手が勝手に、僕に入れたみたいで」
「そうなんだ……手が勝手に、か。不思議だね。
しかも、佐藤先輩と如月さん、あと城崎先輩がいないんだ。なんか関係がありそうで」
「え」
手が勝手に、というのは引っ掛かる、操作されているような顔と言い回しだった。
しかも、人外役職だった3人がいないだって? 章汰は顔が広い訳ではないし見落としている可能性もあるが、本当なら確実に貴族のお遊びではない。
……それに、この想いは何処にやればいいんだ。自分の手で先輩を吊った上に、この世界からも消してしまっただなんて。
「晴哉、城崎先輩好きだったよね。ごめん、こんな事言って」
「いや、事実を伝えてくれてありがたいよ。……椎名さんはいるのかな」
「呼びましたか?」
ひょこっと現れた椎名さんに僕らは思わず声を漏らした。この2ヶ月、それほどクラスの為に何かしてこなかった僕だ。名札を見て、初めて同じクラスだと知った。
「私もおかしいと思ってたんです。陽ちゃん、いつもこのくらいの時間に来てくれるのに。しかもあの子は顔が広いから、病欠でも遅刻でも全学年の友人達に知れ渡るはずなのに、全然その気配もないし」
陽……如月さんの名前か。きっと友達なのだろう。
椎名さんは、3人という少人数なら大丈夫みたいだ。章汰と同じようなタイプ。ゲーム中では考えられない程すらすらと喋りかけてきた。
「だよね。……先輩達、心配だな」
「ほんとですよ。でも、ゲームの目的とかが分からないと居場所諸々検討もつきませんし」
「やっぱ裏で大きな力が働いているとしか思えない……今なら分かるんだけど、上流階級だかの住民のお遊びならゲーム未経験者なんて要らないはずなんだよ、きっと」
僕は、目を細くさせて窓の外の空を眺める章汰を一瞥した。
きみの嘘、僕の恋心-リアル人狼ゲーム- 幸野曇 @sachino_kumori
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