第17話 エピローグ。これっぽっちの幸せ

 神に願いを書いてみよう。具体的に両手で数える程度の量と優先順位をつけてこれだけは『絶対にかなえる』という自分の軸を持とう。


 深海理人は、引きこもりながら稼ぎ、生活するという願いを持った。高校を中退し中卒ながらネットビジネスを調べまくっている。株式投資、FX、バイナリーオプション、ブログ・アフィリエイト、スキルの売買、という風に稼ぐ手段はいっぱいある。今までの自分は必死になって引きこもる生活を考えていなかった。それが、あら不思議。願いを紙に書くだけで今までのことがウソのように新しい道が見えてきた。


 人は、バイアスを持っている。だから普段は気が付かない。しかし、例えば、『赤、赤、赤』と唱え、紙に書き出して外出すると、今まで見えなかった赤色のものがたくさん見えてくる。これはカラーバス効果といって、脳が勝手に赤色を探してしまうからだ。引き寄せの法則もこれに同じ。類は友を呼ぶ、笑う門には福来る、と、欲しいものを書き出せば、脳が勝手に願望をインストールし、欲望を満たすまで行動をがんがん起こす。


 だから。理人は幸せだった。


 ブログを書いている最中、スマホにラインが表示される。日葵から。


『ブログ読んだ。頑張れ!』


『ありがとう。クリックしてくれれば僕にお金入る。毎日クリックして』


『不正は許さん。今から行くね』


 と今では日葵とライン仲間。友達だ。


 初めての女友達。毎日連絡しあい、わくわくが止まらない。


 ちなみに一個目の願いは、引きこもりながら稼ぎ、生活する。


 そして、深海理人の二つ目の願いが、


 ピンポーン。「お邪魔しまーす」


「はーい、どうぞ!」


 二つ目の願い、それは、日葵に告白する。という内容だった。


 理人は10代。かなえたい願いがたくさんある。生活、恋愛、夢、お金。それら、すべてを引き寄せていく。紙に書かれたたった10個の願いが、どんどんと実現していく。


 ちなみに10個目は、もっと読書がしたい。だった。


「おすすめの本を持ってきたよー」


 これっぽっちの幸せ。しかし、理人が1000回ループして得た幸せ。こんなにも幸福なことがあっていいのか罪深くなる。でも、彼らはまだまだ幸せになる。


 だって世の中の絶対的な法則を知っているのだから。彼らはどんどん成長する。


 必ず。


――Fin

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