第16話 VS悪魔②
となるとある矛盾が生まれる。
悪魔を倒す能力は存在しない。では、なぜ嘘をついた。
リココス星雲でも地球でも何でもいいが、ある物体Xは絶望している人間に善なる能力を授けた。すべては地球を滅ぼすため……滅ぼすため?
「全部嘘だよな、悪魔」
最初から存在Xは地球を滅ぼそうとしていなかった。すべては悪魔が作り上げた嘘とどのつまり、でっち上げ。じゃあ、何のためにそんなことをしたのか。
「悪魔、すべては少女が願ったからなんだ」
ある少女が願ってしまった。地球を滅ぼしたい、と。
その願いが存在Xによって具現化され、善なる能力として開花した。
理人は日葵を両手で抱きしめて抑え込んだ。
「悪魔の正体。それはすべて虚栄なんだ。海上日葵という少女が願い作り上げた能力『悪魔になる』という善。お前の正体は能力者による二重人格なんだよ」
「人間め、やめろ、離せ」
抵抗する悪魔を力いっぱい抱きしめる理人。もう離さない。
「僕は君を助けたい。悪魔になって地球を滅ぼそうとする中二病で、電波で、そんでもってチャネラーな君を救いたいんだ!」
海上日葵という少女は悪魔になることを願った。悪魔はそのカリスマ性から善なる能力者をまとめあげた。実際、地球と話した白い猫は、存在Xと会話もしたが地球を滅ぼせという命令は一度も下されていない。すべては悪魔の仕組んだ罠だった。
「僕に悪魔を倒す力は存在しない。でも悪魔から助ける方法はある。二重人格を自覚してくれ、日葵さん。僕が君を絶対助ける」
「私が、この高潔なる悪魔が、ただの人間だと!?」
「ああ、君はずっと悪魔のふりをした人間だったんだ。願いを叶えてきたのは善なる能力。悪魔も君の一部だ」
「嘘だ、嘘だ、嘘だ、いやぁあああー!」
悪魔の皮を被った日葵が叫ぶ。辛かったろう、寂しかったろう、理人にはよく分かる。人間誰しも他人になりきり世界を批判したくなることが多くある。1000人救う旅で気づいたことは、人は弱い生き物なんだ、ということだ。
「だから僕らは引き寄せの法則を使う。願望を口に出してお互いを引き寄せあう」
かのエイブラハム様。どうか、日葵を、彼女を救ってくださいませ。
もし存在Xという超能力者の親玉がいるのならば、この物語を、ハッピーエンドに変えてほしい。いや、他力本願じゃだめだ。引き寄せの法則を使う。この物語は深海理人と海上日葵のハッピーエンドなのだ、と思い込む。
最後は神頼み。馬鹿馬鹿しいかもしれない。しかし、案外悪く。結局、神頼みだの引き寄せの法則だのを信じた人が成功者となり、幸せになる。
「チャネラーの日葵さん。僕は救われた。だからあなたも救われる。僕が決めた」
奇跡が起きた。
二人は光り輝き、発光し、蛍の光になる。
1001人目の少女。すべては救われた。
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