侵入者

結城彼方

侵入者

(今日も1日疲れたな~)


そう思いながらワンルームの部屋に入る。部屋の時計を見ると夜8時30分。冷蔵庫の中のモノを適当に食べ、風呂場に入る。シャワーを浴び、初めて試すシャンプーで髪を洗う。


(うん。なかなか良い香りだ!気に入った。)


体も洗い湯船に浸かる。あったかいお湯が俺の体から疲れを抜いてくれる。しばらく湯船に浸かっていると、さっき冷蔵庫を見た時、ビールがあった事を思い出した。風呂から出て体を拭く。タオルも良い香りだ。髪をドライヤーで乾かし、下着を着る。冷蔵庫を開けてビールを取り出し腰に手を当てて飲む。たった一杯のビールが生きる気力を与えてくれる。何もない平和な日常に感謝したくなってくる。


気が付くと、時間は夜10時30分を回っていた。少し早いがもう寝よう。布団に入ってしばらくすると、心地よい睡魔が襲ってきた。完全に眠りに落ちる寸前だったその時。


ガチャガチャ


この部屋の鍵を開けようとする音がした。扉が開く前に隠れないと。俺は素早く枕元に隠しておいた護身用のナイフを持ってトイレに移動し、ブレーカーを落として息を潜めた。扉が開き声がした。


「あれ?電球きれてんのかな?」


声から察するに女だ。女はトイレの前を通り過ぎ、ベッドのある部屋に進む。次の瞬間、俺は女の背後に立ち、首もとにナイフを当ててこう言った。


「動くな!!」


いきなり背後を取られるなんて、女にとっても予想外だったのだろう。怯えた声で女は言った。










「あなた誰?何で私の部屋にいるの?」














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

侵入者 結城彼方 @yukikanata001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ