心神喪失により、無罪

台上ありん

はじめに

 今年の7月28日、延長された通常国会が終了する2日前、法務大臣の命令により東京拘置所において死刑が執行された。


 処刑されたのは、横山辰馬37歳。児童4人に対する殺人の罪で、死刑判決を受けていた。判決確定から6年が経過していた。


 事件発生当時、私はとある雑誌関係者の依頼により、事件について調べる機会があったため、内実をそれなりに詳しく知っている。


 以下、ここに私の知っていること、調べたことを記しておきたいと思う。



 その前に、読者にひとつご承知いただきたいことがある。


 私は、私が見たこと、聞いたこと、あるいは調べて事実である可能性が高いことのみを記すことに徹し、みずからの価値判断は極力避けたいと思っている。

 出来事について私が主観による注釈を入れることで、読者を誘導してはならないと考えるからだ。よって、無味乾燥な文章がだらだらと続くことになるが、ご容赦願いたい。


 しかし、人は完全に客観に位置することはできない。事実、私が取材して得た情報の中で、信憑性に大いに疑問があるものは、ここに記していない。


 私の仕事はあくまでも、判断材料のひとつを提示するに留まるだろう。

 ぜひとも各位、読後にそれぞれ、真実がどのようなものであったかを探求していただきたいと思っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る