八二月九日

 本日から盆に入っているらしい。わたしはいつも通り仕事に行っており、特段変わったこともない。仕事に行く道中、昼休み、はたまた帰りに寄り道をする時、相変わらず『たま』を聞きながら、星新一氏の短編集なんかを読んでる。先日から、ちょっと酒をやめようかとやっているが、いかんせん缶ビールを買って帰ってしまう。まあ、少量であれば百薬の長だというし。ただ、アルコールは非常に時間泥棒なので、飲み始めると全てを諦めてしまわないといけないのが、玉にきずなのだ。そう思い、先日は酒を飲むのを渋っていた。日課にしている「約千文字の文章を書くこと」と「筋トレ」、そのどちらも終わらせていない。それで酒を飲むのはよろしくない。しかし、なにもする気が起きないため冷たい酒を入れ、脳をバーストさせ、できることなら散歩にまで出て行きたいような気分だった。しかし何もやっていないまま、酒を飲むのももどかしい。もうどうしようもねえな、とただただ床に転がり頭をドロリとさせていたところ、冷蔵庫から叫び声が聞こえた。なんだなんだと冷蔵庫のドアを開けると、唯一入っているビール缶の内の一本、それのど真ん中に横一文字の切れ目が入っている。よく見るとそれは切れ目ではなく、口であった。切れ目の上下にはふっくらとした唇があり、魚のようにパクパクと開いたり閉じたりしている。そっと手に取り上唇を撫でてみると、ビールはボソボソと何かをつぶやいたようだが言っていることは聞き取れない。ふむ、と思い缶を開けて中身を飲む。再度缶を見ると、もう口はなくなっていた。開けてしまっては仕方がないので、サバの水煮缶にポン酢をかけてつまみを作り、テーブルに座り直す。これはわたしの意思ではなく、缶に呼ばれて飲むのである。

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東の日記 @azuma123

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