足跡

 本作には超人も奇跡も存在しない。天才外科医も現れなければ異世界もない。淡々と、そして粛々と進行すべきが進行する。
 それを残酷と判断するのか現実と判断するのかは読者一人一人の自由だろう。私は後者である。
 ただ、あたかも生乾きのコンクリートに野良猫が足跡を残したように私の心の湿った部分に精一杯の『野生』……生き物としてのあるがままの言動……を本作は残した。
 詳細本作。