第4話 美少女育成異世界転生
「……で、ここは?」
目の前には……大勢の小さな子どもたちが駆け回っていた。どうやら保育園か、幼稚園か……いずれにしてもそういう施設のようである。
「……孤児院です」
と、俺の隣にいつの間にかいたアンナが暗い顔でそう言う。
「孤児院? なぜこんな場所に?」
「……お姫様も駄目、女勇者さんも駄目……だったら、自分で最初からお好みのヒロインを育ててみれば良いのでは?」
アンナは機嫌悪そうにそう言う。俺は少し考える。
「……確かにそれは一理あるな」
「え!? そ、そうですか? ですよね! いやぁ! 私って冴えてるなぁ!」
俺は今一度目の前で走り回る子どもたちを見る。子どもたちは確かに純粋そうで、どうにでも育ちそうだ。
「あ! この世界に転生すると、あそこで走っている女の子のお父さん代わりになるんですよ? どうです? 可愛いでしょう?」
と、俺達がそちらを見ていると、その子はこちらに気づいて笑顔で手を振ってくる。確かに悪くない話ではある。
「……そうだな。きっと、楽しいのかもしれない」
「でしょう! ヨシ! では、この世界で決定ですね! さっそく転生を――」
「……だけど、やはり駄目だ」
アンナはもはやリアクションはせず、無表情だった。
「……何故です?」
「……考えても見ろ。あの子が成長するわけだろ? 俺は……あの可愛い子を正しく育てることができるかどうか自信がない」
「え……だ、大丈夫ですよ! 放っておいても成長しますから!」
「は……? お前、今なんて言った?」
「え……ですから、放っておいても成長するって……」
「……益々駄目だろ! 父親代わりになるのに放っておいても成長するって……それじゃあ、父親代わりになる意味ないだろうが!」
アンナは俺のことを真顔で見ている。それでも、俺の気持ちは変わらなかった。
「……とにかく、駄目なんだよ。この世界も駄目だ」
「……そうですか」
と、不意にアンナの雰囲気が変わったようだった。それと同時に、いつのまにか今まで駆け回っていた子供達の姿も無くなっていた。
「え……な、なんだ?」
「……アナタは、我儘すぎます。あれも駄目、これも駄目……じゃあ、何がいいんですか? 自分では何が良いのかも言わずにただ私にダメ出ししているだけじゃないですか」
俺は反論できなかった。確かにその通りだからである。
「アナタ……転生する前、ロクな人間じゃなかったでしょう?」
アンナは鋭い瞳で俺にそう言う。俺は……これに反論できなかった。
俺は死んだ……でも、それは外部的要因じゃない。
俺自身が……生きている世界を嫌になったからだ。きっと、どこかに俺に合った世界がある……そう思ったからこそ、俺は――
「……関係ないだろ。早く次の世界に――」
「ええ。いいですよ。次の世界は……アナタにぴったりの世界です」
満面の笑みを浮かべながら、アンナは俺に銃弾を放ったのだった。
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