第2話 姫様結婚異世界転生
「さて、次の異世界です」
気づくといつの間にか俺は大きな城……中世ヨーロッパ風の城の前に立っていた。
そして、俺の隣には先程、俺を拳銃で射殺したアンナがニコニコしながら立っている。
「……ついさっき射殺した相手によくそんな笑顔が向けられるな」
「え? 怒っているんですか? 仕方ないですよ。転生するのは死ななきゃいけないんですから」
悪びれる様子もなくアンナはそう言う。おそらく、ここで責めても意味がないだろう。俺は諦めて今一度城の方を見る。
「……で、ここは?」
「ここはこの世界の中心部……王都の城ですね」
「王都……この中に王様がいるってことか?」
「ええ。しかも! それだけじゃありませんよ!」
もったいぶった調子で得意そうな笑顔を向けてくるアンナ。おそらく、俺に聞いてほしいのだろうが、なんだかムカつくので聞きたくなかった。
「……気になりませんか?」
「……はいはい。気になります」
「ですよね! しかも! 城の中には姫様もいて、アナタに求婚してきます!」
……求婚。求婚っていうことは、結婚したいってことだよな……つまり、この世界に転生すると、その姫様とやらと結婚するってことか。
「え……姫様って、美人?」
「そりゃあそうでしょう! 一国の姫様ですよ! 美人に決まってるじゃないですか!」
興奮気味にそういうアンナ。しかし、俺にはもう一つ気になることがあった。
「……で、魔王は?」
「いませんよ! だって、魔王がいる異世界は嫌なんでしょう?」
……なるほど。確かに要望通りにしてくれているようだ。魔王がいなければそもそも、魔王と戦う必要もないだろう。
しかし――
「……なぁ、この国、もしかして……他国と戦争しているんじゃないか?」
俺がそう言うと、アンナはギクッとした顔をする。俺はやはりか、と納得した。
「え……な、なぜそう思うんです」
「ほら、あれ」
俺はそう言って城の入り口を指差す。城の前には重装備の兵士が何人も立っている。
「もし、この国が平和そのものなら、あんなにも重装備の兵士を何人も城の前に配置しないだろう。それに、城の反対側を見ろ」
俺がそう言うとアンナも同様に城の反対側に顔を向ける。そこには城下町が広がっているのだが……どうにも活気がなく、人も少ない。
「戦争中だから、城町は活気がないし、戦死者が多いから人も少ない……どう考えても他国と戦争しているだろう」
と、俺がそう言っていたその時だった。
「隣国が攻めてきたぞ!」
兵士が一人、こちらへ走ってやってきた。重装備の兵士達が慌てて城の中に入っていく。すでに遠くの方から大砲が発射されるような音が聞こえてくる。
「……結論として、ちょっとこの世界も、嫌かなぁ」
と、アンナの表情を見ると……今にも泣き出しそうになりながら俺のことを見ている。
「え……何?」
「わ、分かりましたよ! さっさと次の異世界に転生させればいいんでしょう!」
「え、ちょっと、待って――」
俺がそう言い終わらないうちに、アンナは拳銃を取り出し、俺に向けて発射……またしても俺は「転生」したのであった。
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