お試し異世界転生
味噌わさび
第1話 オーソドックス中世風異世界転生
「はい! 最初はこの世界ですね!」
目の前に広がるのは、いわゆる中世風ヨーロッパ風の村々。動いている人々も、大体それっぽい格好をしている。
そして、俺の隣にいるのはなぜかスーツ姿の銀髪の美少女だった。
「……えっと、いきなりそう言われてもね」
「どうです? 標準的な異世界と思うんですが」
少女はその髪色と同じ銀色の瞳をキラキラさせて俺を見る。
「……あー……えっと、そうですね……君、名前なんだっけ?」
「え? さっき言ったじゃないですか。私の名前はアンナですよ、転生者さん」
困り顔でそういう少女……アンナ。
ああ、思い出した……俺は死んだのだ。死んで異世界に転生するのだ……と、目の前の少女、アンナから説明されたのである。
このアンナという少女はなんでも、俺の異世界転生を手伝う「案内係」のようで、とりあえず、「お試し」として異世界に転生させた。
そして、最初に案内する異世界として、今俺がいるこの異世界が紹介されたのである。
「で、どうですか? 転生者さん、この異世界! 住民はそれなりに優しいし、魔物はそれなりの強さで、魔王もいますよ!」
「え……魔王いるの?」
俺が嫌な顔をすると、アンナは目を丸くする。
「もしかして……魔王、嫌なんですか?」
「いや……そりゃあ、嫌でしょ。魔王って……え? それ、倒さなきゃいけないの?」
俺がそう言うとアンナは信じられないという顔で俺を見る。
「え……で、でも! 魔王、倒したくないですか? この異世界ならチートオプションとか付けられますよ!?」
「……魔王がいない異世界でもチートオプションって付けられるんじゃないの?」
そう言うと、アンナは気落ちした顔で俺を見る。どうやら、アンナの頭の中では当然俺が魔王を倒したいものと考えていたようである。
「……そ、そうですか。そうなると……大分、転生できる異世界が限られますね……」
「え……魔王ってそんなにどの世界にもいるもんなの?」
「そ、そりゃあそうでしょう! 異世界ですよ! 魔王がいるに決まってるじゃないですか!」
アンナは少し興奮した様子で言うので、俺は思わず身を引いてしまう。
いや、まぁ、異世界といえばそういうのはお約束なんだろうけど……魔王がいるってわかっているのなら、その世界には転生したくないなぁ。
「……わかりました。それでしたら、他の異世界をご紹介しましょう」
アンナは渋々頷くと、なぜかいきなり懐から何かを取り出す。
それは……拳銃だった。
「……え? 何してるの?」
「何って……他の異世界を案内するために、アナタには転生してもらうんですよ」
悪びれる感じもなくそう言うと、パァンとけたたましい音が一瞬だけ聞こえ、俺の意識は瞬時にシャットアウトされたのであった。
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