第5話 闇への転生

「……え?」


 気づくと俺の周りは……真っ暗だった。一面の闇……本当に何も見えなかった。


「な、なんだよ、これ……お、おい! アンナ!?」


 アンナの名前を呼ぶが、返事はない。それどころか、人もいないし、何もない……俺はまた転生したのか? でも、これが次の世界って……


「ふ、ふざけんな! こんな……何もない闇が世界のわけないだろうが!」


 俺が叫ぶ声はむなしくあたりに響くだけである。誰も俺に返事をしないし、何かが見えるわけでもない。


 それから……どれくらいの時間が経っただろうか。


 食欲も、睡眠欲も……ありとあらゆる人間に必須な欲望が湧き上がってこない。俺は闇の中に蹲っているだけ……ただ一つ、くっきりと明確になるのは、恐怖だった。


 このままでは周囲の闇と同化してしまうのではないか……段々と自分が曖昧になっていく感じ……


「い、嫌だ……消えたくない……!」


 意味もなく泣き出してみても返事があるわけではない。俺はただ、誰かに会いたかった。誰かに返事をしてほしかった。


 こんなことなら……そもそも、死ぬんじゃなかった……


「転生なんてしなくていいから……元の世界に戻してくれよ……!」


「やれやれ。ようやく分かったみたいですね」


 と、いきなり背後から声がする。俺は思わず振り返る。そこには……スーツ姿の銀髪の美少女が立っていた。


「あ、アンナ……」


 と、俺がそう言った瞬間、アンナはいきなり俺の腹部に向けて発砲した。


「あ……痛っ……!?」


 俺はその場に倒れ込む。あっという間に大量の血液が流れ出す。


「フフッ……転生者さん、中々珍しいタイプですよ。ここまで私を困らせるなんて、逆に少興味が湧いてきちゃいました。というか、アナタのこと……気に入っちゃいました。あ、といっても、あまりにも可愛そうな人だな、って意味ですよ?」


 なぜかアンナは少し悲しそうな顔で、倒れ込んでいる俺を見ている。


「だ、だったら……なんで、こんな……転生させるんじゃ……ないのか?」


「安心して下さい。放っておけば出血死しますから、ちゃんと転生できますよ。でも、これで分かったでしょう? アナタ、まだ、異世界転生に向いてないみたいです」


「え……じゃあ、俺……どうなるんだ……?」


「言ったじゃないですか。転生するって……って言っても、今度はアナタだけじゃないですけどね」


 すると、アンナは今一度拳銃を取り出し、銃口をこめかみに当てる。


「次の世界でも……案内させてくださいね?」


 そのまま引き金を引いた。けたたましい音と共に、アンナはそのまま倒れる。


 同時に俺の意識も段々と遠のいていく。意味がわからない……俺、今度はどうなって――

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