鏡の中の宇宙
@momoko0303
第1話 始まる
彼女は小説家だ。僕はたった一人の読者。
彼女は放課後、沈みかけた夕日の光の差し込む図書室に毎週金曜日やってくる。ひっそりと存在する図書館にやってきては一番奥、ここ何年も誰も触れていないような埃の被った図鑑のコーナーの隙間にそれを隠していく。それは夕日が沈み眠っていく図書館の中で確かにあった。誰かに探し出されるのを待っているかのように。
私は小説家。読者はまだいない。
私は毎週金曜日の放課後図書室にいく。放課後の図書室は好き。生徒がほとんどいなくなった学校で今まで隠れていた本達がひそひそ話をしているような感覚に陥ったことがある。本棚に収まるあの紙の束達は本棚に収まりきらない物語が読まれるのを今か今かと待っている。
「私の本も仲間に入れて下さい。」
そう呟きながら分厚い図鑑と図鑑の間に本を挟んだ。この図書室の本たちは私の本を受け入れてくれるかな。
鏡の中の宇宙 @momoko0303
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