謎めいた存在に感じる、美しさと表裏一体の恐れ

浮気された女性が、浮気相手を呪うお話。もしくは、謎めいたたばこ屋のお姉さんの物語。
人を呪わば穴ふたつというか、呪い版『猿の手』みたいな筋だと思うのですが、なにより魅力的なのはやはり終着点のスッキリしなさ加減。いや物語自体はきっちり終わっているのですが、でも読後に胸の奥にこびりついて離れない、なにやらドロドロとした黒い後味。
はたして、この結末は良かったのか悪かったのか? 一体、どうなっていたら最善といえたのか? この辺りをいつまでもぐるぐる考えさせられてしまいます。
失われたのはふたつの命。迷惑なストーカーの命と、生まれる前の赤ん坊の命。それぞれ「望んで消したもの」と「二番目に大切なもの」。しかし、そこに前提として「一番大事なもの」が据えられているおかげで、いやがうえにもその意味が引き立ちます。
――はたして自分は、そこに無意識のうちに順列をつけていなかったか?
エグいです。読後、しっかり腹に残る割り切れなさ。ずっしりと胸に刺さりました。