社会不適合者処分法

結城彼方

社会不適合者処分法

国会にて、首相である日野 龍が率いる与党の優性党から、ある法案が提出された。その名も


「社会不適合者処分法」


激化する経済競争に対応するために、社会保障を浪費するだけの人間を殺処分する法律だ。対象となるのは


・身体障害者


・精神障害者


・回復する見込みの無い病人


・長期に渡り働ける見込みの無い者


・労働に携わっても十分な結果を出せない者


・労働者相当の納税ができない無職の者


・労働者相当の納税ができないにも関わらず、働く意思の無い者


以上だ。これらに該当しないためには、何らかの職に就いて、十分な成果をだし続けるか、十分な税金を納めなければいけない。そんな社会適合者には生存を保障されるライフナンバーカードが政府から支給される。ライフナンバーカードを剥奪されれば、社会復帰審査を受けさせられ、不合格なら殺処分送り。処分方法は薬剤による安楽死だ。


世論は大きく割れた。このままでは先進国でいられなくなるという懸念から、法律を支持する者。所謂、社会における強者達。


そして、いつ社会不適合者に転落するか不安にかられる中間層、すでに処分が確定してるも同然の社会的弱者達からの反対があった。


しかし、反対派の活動も虚しく、自分達は弱者の側に墜ちる訳がない、社会不適合者になるはずがないと強気の強者達の支持に負け、法案は可決されてしまう。


「社会不適合者処分法」施行初日、事件が起きた。優性党党首にして首相でもある日野 龍が乗った車が交通事故にあったのだ。


「首相聴こえますか?首相?聴こえますか?」


医師が語りかける。


首相はゆっくりと口を開いた。


「私は、どうなったのだ?」


医師が淡々と答えた。


「両足は潰れ、腕も両方とも使い物になりません。また、脳にも損傷を受けてるみたいなので、判断力も低下してる可能性があります。つまり、、、殺処分送りです。」


首相はぎょっとした。そして縋るような声で言った。


「私は・・・・愚かだった・・・誰もが・・・・弱者になりうる。自分も含めてな。だから待ってくれ・・・・」


「ええ。おっしゃる通りです。でも、もう止められません。法律は施行されましたから。処分班!日野 龍 首相を殺処分室へ!!」





殺処分は執行された。






即日、号外が出された。


「社会不適合者処分法!第1号は首相」


「1番の不適合者は首相だった!?」


「首相!前代未聞のダイナミック自殺!!」


そして、号外の片隅に、首相の最後の言葉が書かれていた。





「誰もが弱者になりうる。」







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社会不適合者処分法 結城彼方 @yukikanata001

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