勝ち組

 2‐A所属の大橋勇也、彼は大富豪の子息である。幼い頃からボンボンと揶揄され続けてきた彼は、自分の力で何かを成し遂げて周囲を黙らせてやりたいと考え、ボクシングを始めた。

 しかし、勇也はその世界で頂点に立つことはできなかった。同じ世代に高橋竜也というとんでもない強敵がいて、彼にだけは勝つことができなかったのだ。

 このまま、くすぶったままでは終われない。

 勇也は今、煮え湯を飲まされ続けた竜也との、何度目かの戦いに挑む。


 試合開始。と、序盤はなんとか五分五分で渡り合えていた勇也だったが、5ラウンド目、徐々に地力の差が出始める。

 そして、劣勢に焦ってムリに前に出たところで、カウンター。勇也、ダウンを喫する。


 朦朧とする意識。しかし、ある意地が彼の体を突き動かし、なんとかカウント9で立ち上がる。

 勇也は思い出していた。

(同じ負け方をしてたまるかよ! 初めての対戦、このカウンターの右で俺はKOされてるんだ!)



 しかし、その試合の後にママに買ってもらったリゾートホテル、時価総額10億円!



 試合再開。しかし、ダメージで立っているのがやっとの勇也。そんな彼に竜也の拳が容赦なく襲い掛かる。

 強烈な右アッパーが炸裂。これには耐え切れず、勇也、ダウンを喫する。

 朦朧とする意識。しかし、ある意地が彼の体を突き動かし、なんとかカウント9で立ち上がる。

 勇也は思い出していた。

(同じ負け方をしてたまるかよ! 2回目の対戦、このアッパーで俺はKOされてるんだ!)



 しかし、その試合の後にママに買ってもらったゴルフリゾート、時価総額100億円!



 試合再開。しかし、ダメージで立っているのがやっとの勇也。そんな彼に竜也の拳が容赦なく襲い掛かる。

 強烈な右フックが炸裂。これには耐え切れず、勇也、ダウンを喫する。

 朦朧とする意識。しかし、ある意地が彼の体を突き動かし、なんとかカウント9で立ち上がる。

 勇也は思い出していた。

(同じ負け方をしてたまるかよ! 3回目の対戦、この右フックで俺はKOされてるんだ!)



 しかし、その試合の後にママに買ってもらったカジノリゾート、時価総額200億円!



 試合再開。しかし、ダメージで立っているのがやっとの勇也。そんな彼に竜也の拳が容赦なく襲い掛かる。

 強烈な右ボディが炸裂。これには耐え切れず、勇也、ダウンを喫する。

 朦朧とする意識。しかし、ある意地が彼の体を突き動かし、なんとかカウント9で立ち上がる。

 勇也は思い出していた。

(同じ負け方をしてたまるかよ! 4回目の対戦、このボディで俺はKOされてるんだ!)



 しかし、その試合の後にママに買ってもらったヒルズ系複合商業施設、時価総額1000億円!



 試合再開。しかし、ダメージで立っているのがやっとの勇也。そんな彼に竜也の拳が容赦なく襲い掛かる。

 強烈な右コークスクリューブローが炸裂。これには耐え切れず、勇也、ダウンを喫する。

 朦朧とする意識。しかし、ある意地が彼の体を突き動かし、なんとかカウント9で立ち上がる。

 勇也は思い出していた。

(同じ負け方をしてたまるかよ! 5回目の対戦、このコークスクリューブローで俺はKOされてるんだ!)



 しかし、その試合の後にママに買ってもらったドバイの人工島、時価総額3000億円!



 さあ、この試合で負けた後には、ママは一体いくらの物件を買って彼を慰めてくれるのでしょうか。

 大橋勇也の不動産収集道は、まだまだ始まったばかりだ!

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残念系しかいないぞ! ~二年A組学級日誌~ 林部 宏紀 @muga

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