隣にいるのに……

チタン

第1話

「どんなに好きでも報われないこともあるよね」


 あなたが私に言った。


「そう、かもね……」


 思わず感情が込もってしまう。

 今日あなたが私を誘ってくれたのも、いつものあの子との恋愛相談。

 私はあなたの前に座っているのに、あなたの目に私は映っていないみたい。

 それが急に悲しくなって、けど思い直して言い直す。


「ううん、だけど、やっぱりそんなことないよ。振られたわけじゃないんだし。また誘ってみようよ」


 無理に声のトーンをあげてみる。

 項垂れていたあなたは少し顔をあげる。


「……うん、そうだね。ありがとう」


 お礼を言われて少し胸が痛む。

 違う。

 私がこうやって相談に乗るのはあなたと話せるのが嬉しいから。

 こうやってアドバイスするのは、あなたに嫌われたくないから。


 ああ、いっそ玉砕してくれたらいいのに。


 こんなことを考えながら相談に乗る私は嫌な女ね。


 あの子じゃなくて私を選んでくれたら……、そうしたらあなたにそんな思いさせないのに。

 きっとあの子よりあなたに尽くしてあげられるのに。


 あなたが私を選んでくれて、ずっとそばにいてくれるなら、私にそれ以上の幸せはないの。


 私はそう思いながらあなたの隣にいるのに。

 ずっとあなたの隣にいるのに……。

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隣にいるのに…… チタン @buntaito

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