「なろう小説〜うっかり人を殺したら」を読み、もっと早くガッKoya小説に手を出さなかったことを悔いた。当然、前作である「学校のデッドリー怪談」に飛びついた。
この二作は対照的だ。「うっかり」は、人の善性が罪業を負った常識人の主人公を苦しめる。一方の「デッドリー」は、怪異に晒される主人公らや周囲の人物を通して人間の嫌なところが見えてくる。そしてどちらもサイコーに笑える。こんな酷い話を笑っている自分は何なんだ?というスパイスも添えて。
思わず唸ってしまうような設定のシュールな怪異を、断じてハッピーエンドではない形で雑に解決する。人が雑に死に、雑に笑える。ちゃぶ台返しやテーブルクロス引きの失敗を見るような美しさ。作中人物はみな倫理観は終わっているが筋は通っており、彼らのリアクションはブラックジョークとして完成している。このフォーマットはバランスを誤ると理屈っぽさが鼻につく下手な漫才のようになってしまうだろう。それを3エピソード綺麗にまとめたガッkoyaさんの手腕が見事だ。それぞれの怪異の導入部が怪談としてマトモに怖いというのが効いている。
今は「うっかり人を殺したら」の連載中だが、本作も完結扱いにはなっていないし、作者さんもTwitterで「書けたら書く」と仰っている。今のあの最新話で終わり、というのもギロチンで切ったようなキモい爽快感があり悪くないが、ガッKoyaさんがまた良い怪異を思いつかないかなと期待したりもする。
あらすじと序盤ですでに反則的な出オチなので、一発ネタかと誤認させられるのですが…。
その後の40分の1という高いのか低いのか微妙な確率で訪れる〝死〟を巡ってのメインキャラ達の皮肉に満ちたやりとりと、しっかり訪れるトンデモでコミカルなオチの繋がりと温度差が面白すぎる。
親しい人以外が死んでも反応に困るよな……というのは、特殊な生い立ちの主人公キャラでなければありふれた感覚だと思いますが、その描き方がウィットに富んでて好きですね。特に、嘘でもこいつは40分の4だと言えないのか、と主人公が苛立つところなど。
生々しく、ドライに描かれる盛り上がりと、それをぶち壊してちゃっかり伏線を回収するクライマックスとの温度差には戸惑う方がいるかもしれませんが、私はまだまだこういうのを摂取したいと思っています。
入学式の日、新たに高校生になった4人の男子は登校途中に怪談「40発弾倉のリボルバー」に巻き込まれる。
それは新クラスの40人の生徒のうち誰か一人が正体不明の銃弾で頭を撃ち抜かれるという怪談。この奇妙な怪奇現象のターゲットに選ばれてしまった4人――永露尚人、速山光汰、礼沢塔哉、サドン崎デス男……果たして凶弾に倒れるのは他のクラスメートか、それともこの中の誰かなのか……。
……僕はホラーとかあんまり詳しくないんで自信はないんですが、誰とは言わないけど、何か一人だけ明らかに絶対死にそうな名前の奴がいますね……。
いや、もうこれタダの出落ちじゃん! そう言いたくなる気持ちはわかるが、実際読んでみるとタダの出落ちじゃないのだ。まずサドン崎の絶妙なウザさを浮き彫りにする会話のセンス。こんなふざけた名前のくせにこういう一人はいたなと感じさせるさじ加減が本当に上手くて、気づけばサドン崎という名前にも違和感を覚えなくなるレベルになるから凄い。
それに突然死ぬのではなく見えない銃で撃たれる「40発弾倉のリボルバー」という設定によって、音を使って死の恐怖を煽る独特の演出。そして終盤で次々畳み掛けるどんでん返しの連続。キャラクターの名前から設定やストーリーに至るまでセンスの塊という感じの新感覚なホラーだ。
「◆第一の怪談 40発弾倉のリボルバー」はきっちり完結しているが、是非この調子で第二、第三の怪談も読んでみたい!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)