第3話 東海道新幹線とスゴクカタイアイス!?

 僕らはバスで京都駅に向かった。

 京都駅に着くころにはすっかり日が落ち、夜の街並みが広がっていた。

 所要時間は8分で、電車より少し長かった。

「何時の新幹線で帰るんだっけ?」

 と加奈が僕に問いかけた。

「18時30分発だね。あと1時間くらいあるよ」

 僕は待ってましたと言わんばかりに答えた。

 そうしたら、思いもよらない返答が返ってきた。

「それじゃー、今から行きたいところがあるからちょっとついてきてー」

 え!?今から行くの!?あと1時間しかないよ。

 加奈はどこに行きたいんだろう。

 僕らは京都駅前の目の前にある京都タワービルに入った。

 京都タワーに登って夜景でも見たいのかな。しかし、僕の予想をはるかに超える場所だった。

 エレベーターに乗り、地下三階に向かった。少し昭和の雰囲気を感じる通路を通ると「京都タワー大浴場~YUU~」と書かれたのれんを見つけた。

 京都タワーの地下に大浴場があるんだ。初めて知ったよ。

「まさか京都タワーの下に大浴場があるなんて!」

 僕は少し驚いたが、京都タワーの地下で入るお風呂に興奮を隠しきれなかった。

 のれんの目の前に入浴券が売っている券売機があるので、そこで購入した。

 今日は土曜日なので、大人(中学生以上)が910円、小学生は450円で入浴できるんだ。

 僕らは、受付の人に入浴券を見せた。その時に衝撃なことを言われた。

「ありがとうね。ゆっくりしていってほしいんだけど、実は2021年6月30日でここを閉めることにしたんだ」

「そうなんですか。小さい時から行ってたので、寂しくなります」

と加奈は悲しそうに言った。

 僕たちは受付の前にある自動販売機の前で待ち合わせをし、それぞれ分かれた。

 男湯の中央にある大きな浴槽には、中心部分に噴水があり、そこからお湯が沸いてるのは印象的だった。

 浴場には、シャンプーやリンス、ボディーソープなどのアメニティーはもちろん、化粧水、女湯のほうには、クレンジングや洗顔料、乳液も置いてあったみたい。

 僕らは30分後くらいに合流した。出る際に

『お風呂気持ちよかったです!また来ます!』

 と元気に挨拶したら

「ありがとうございます。またのご利用をお待ちしてます。」

 と受付の方が笑顔で返してくれた。

 僕らは、京都タワーを後にした。

 京都駅に着いた頃には、時計は18時15分を示していた。

 事前に切符を買っておいたので、ゆっくり新幹線に乗ることができそうだ。

「乗る新幹線は、のぞみ246号の東京行だな。加奈、何番線だっけ?」

「11番線発、東京駅17番線着だよー」

 相変わらず加奈は、僕の問いに即答する。

 鉄道の知識は僕のほうが上かもしれないが、時間が絡むとさすがの記憶と計算力。一瞬で答えるのがすごいなぁ~、と改めて感心した。

 僕らはコンビニで食料と飲み物を補充し、加奈の言うとおりに17番線に向かった。

 夜ということもあって、ホーム上にはたくさんのお客さんがいた。

 幸いなことに指定席を予約しているので、無事に座って東京駅まで帰ることができそうだ。流石に2時間立って帰るのはきついしね。

 のぞみ246号は時間通りに京都駅に到着し、18時30分に京都駅を発車した。

 僕らの乗った車両はN700Aで、東海道新幹線を走っている営業列車の中で2番目に新しい車両なんだ。

 N700Aには二種類あって、既存のN700系を改造したタイプと、新造したタイプがあるんだ。同じN700Aだけど二種類あって面白いね。

 新幹線は、在来線と違って、窓の外の景色がどんどん流れていくのがわかる。

 東海道新幹線での最高時速は285km/hで、日本最速とはいかないけど結構速いスピードで走っているんだ。

「私、久しぶりに新幹線乗ったけど、爽快感あるね!残念ながら夜だからあまり景色見ることできないけど」

 加奈の言う通り、実際に家の明かりなどしか見えないんだ。

 僕らは京都駅で買ったお弁当を食べた。

 食後のデザートを食べたいなと思ったとき、アテンダントさんが運んでいるワゴンが目についた。

「すみませんー!アイス1つください」

「はい。味は、バニラ、抹茶、チョコの三種類ですがいかがなさいますか?」

「バニラ一つください」

「かしこまいりました」

 アテンダントさんが素早くアイスを取り出し、僕に手渡した。

 値段は300円でコーヒーとセットで買うと50円引きなんだって。

「お買い上げありがとうございます」

 そう言って、アテンダントさんはワゴンを押し、他のお客さんのもとで止まった。

 アテンダントさんも大変だなぁ。

 土曜日ということもあって車内は満席なため、車内販売を利用する人も多い。

 僕がしばらく外の景色を眺めてると、加奈は、顔を覗かせて言った。

「優斗、早く食べないとアイス溶けちゃうよ」

「実は、すぐには固すぎて食べれないから、わざと10分以上置いてるんだよ」

 僕は、いたずらっ子のように笑って答えた。

「固すぎて食べれないアイスなんて面白いね。なんていうアイスなの?」

「『スジャータ スーパープレミアムアイス』って言うんだけど、鉄道ファンの間では『シンカンセンスゴクカタイアイス』って呼ばれてるんだ。付属のプラスチックのスプーンだと折れてしまうこともあるから、アルミアイスクリームスプーンも売っているよ」

 その話をした後、加奈も食べたくなったのかアイスを買って食べていた。

「まもなく、名古屋、名古屋です」

 名古屋駅到着のアナウンスが車内に響いた。

 次回へ続く...





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