第2話 若さの価値を考えるパラサイト
さて、今回増えたパラサイトさんは弓月ちゃんという同い年の高校1年だった。前髪パッツンの黒髪ロングで緑色の縁眼鏡をかけているのだが、それが彼女の大きく印象的な目をさらに際立たせていた。
「弓月ちゃんって野中女子なの?めちゃ名門じゃん!」
「昌喜の美女ランキングで上位の学校ってやつ?」
「そうそう、ただビジュアルだけじゃなく卒業生が東大とか行っちゃう感じで偏差値も高いんだよ」
「わ、私は下の方ですよ」と弓月ちゃんは困ったように両手を前に振りながら言った。
「っていうか、1年前から家出してて寝る所はどうしてたの?」
「えっと、それは…」
「友達の所を転々としてたとか?」
「最初はそうだったんですけど、段々と嫌がられて…」
「わかる!めっちゃくちゃわかる!」
「尚弥、気持ち込めすぎ」
「昌喜さん〜、人のふり見て我がふり直せですよ」
「革命というのは人と同じ事してたら駄目なんだよ」
「お前はチェゲバラじゃなく家帰ればだ」
「で、その後どうしたの?」バニーガール姿の麻美さんが聞いた。
「ここ半年ぐらいは学校の保健室で寝泊まりさせてもらってました」
「先生とか何も言わなかったの?」
「黙認してたんだと思います。うちの親には学校も強く言えないみたいで…」
その先は聞いてくれるなという雰囲気を醸し出してたので僕は別の話題へと移ろうと思った。
「とりあえずだ、ここに住むというなら仕方ない。ただ家賃はいいとして食費とかは自分で用意してもらいたい。あと消耗品や衣服とか色々必要でしょ?」
「ですね。そろそろ下着とかも傷んできたし色々変え買いたいなと。お金稼ぐならやっぱりバイトですよね?」
「ねぇ、本当に家帰る気ないの?」突然それは麻美さんから発せられた。
「さっきは歓迎とか今の気持ちを優先させたらとか言ったけどさ、当然それは変わらないんだけどただ一つ確認しておきたいことがあって」
弓月ちゃんは眼鏡の端を上げる仕草をした。それは話の続きを促す動作のようだった。
「本当は帰りたいんじゃないの?それを無視して家にいたらしなくていい事に時間を使うってどうなのかって。人生楽しい事はこれからもあるだろうけど10代の青春時代ってのはやっぱり特別だから」
弓月ちゃんは先ほどと変わらず麻美さんを直視していたが心なしか動揺してる気がした。
「…帰りたくないと言えば嘘かもしれません。ただ、まだ、もう少しだけ時間がほしいとも思っています」と少しトーンを落とした声で話した。
青春時代は特別。それは現在進行形の僕達にはあまりピンとこない言葉だが過ぎ去って振り返ってみたらやはりそう思うのだろうか。いや、きっとそうだから麻美さんはきちんと確認したんだ。しかし、バニーガール姿と言葉のギャップが凄まじいぜ。
そして3分ぐらいは誰も言葉を発せず時間が過ぎた。誰も何も言う気配がないので僕はある考えを言うことにした。
「じゃぁさ、青春が過ぎ去った後に振り返っても良かったなと思えるお金稼ぎをしたらいいんじゃない?」
鏡みたいな水面に水滴を落としたように僕の声が皆に届き、そして皆が僕を一斉に見た。
「…って尚弥、何か案があんの?」と昌喜。
「朧げで具体的には無いからさ、とりあえずまずみんなで作戦会議しようよ」
そして僕は見慣れてる幼馴染の方を向き言った。
「革命を起こすんだろ?昌喜。」
パラサイト・リブ F少年 @Tamanegi-boy
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