パラサイト・リブ

F少年

第1話 プロローグ

「なぁ、怖い話していい?」


「やだ」


「あれは俺が10歳の時だった…」


「するのかよ!」


「俺は2階の部屋で留守番をしてた。家には誰もいないはずだった。けど1階のほうから話し声がしたんだ。怖いなぁ、怖いなぁと思いながら下に行くことにした」


「稲川さん恐ろしく似てないな」


「階段を降りて耳をすませると、どうやらそれはリビングのほうから聞こえたんだ」


「普通にテレビやラジオがつけっぱなしだったってオチはやめてくれよな」


「さぁて、そろそろ帰るか」


「お前ほんと帰れ!昌喜!」


「お前が怖い話が嫌だと言うから急遽オチを変えたんだろうが!」


「責任のおすそ分けやめろ!」


そんなどうでもいいやり取りをしているここは俺、本田尚弥(高校1年)が住んでる一軒家である。親が海外出張のため今は妹と二人暮らし、になる予定だったがこの幼馴染の原田昌喜ともう一人が寄生虫の如く住み着いているのだ。


「うるさいなぁ、さっきから。こっちは君ら学生と違って仕事中なんだぞ!」


「って言いながらエロサイトみてんじゃねぇか麻美さん!あとそのバニーガール衣装どうにかしろ!」


とまぁあと一人というのは早乙女麻美さんという23歳の一応社会人(変態)である。親戚でも何でもないが色々と事情がありここに住み着いてしまったのだ。


「ちょっと兄貴さっきからツッコミがうるさいのよ!」


「正当防衛だろ、これは!その前にお前のバイオリンの方がうるさいだろ!」


「何言ってんの?!これはバイオリンじゃなくてニッケルハルパよ!馬鹿?」


「どっちゃでもええわい!それよりこないだのお鍋の蓋はどうした!」


「はぁ、兄貴、あれハンドパン。あれをお鍋の蓋って言う馬鹿は身長165cmの中肉中背で見た目パッとしない原田昌喜の幼馴染か兄貴ぐらいだよ」


「それどっちも俺な!」


そしてこいつは妹の本田伊万里(中学2年)。外見は可愛い部類に入るらしく原田がここに寄生してるのはこいつに気があるやらないやらだと思っている。


「あっ、そういえば今日の夕食当番は麻美さん?」


そう聞かれた麻美さんだがエロサイトに夢中なのかパソコンから目を離さずに答えた


「あぁ、その辺は抜かりはない。麻婆豆腐かパトゥルジャン・サタラスかにする予定だ」


「とりあえず麻婆豆腐に頑張ってほしいところです…」


「それよりどうでもいい事なんだが」


いつもの軽い感じで麻美さんは言った


「その窓の外にいる人は誰?」


「えっ?わーー!!」確かに人がいた!


よく見ると僕らと同い年ぐらいの女の人で困ったように少し微笑んでいた。


「あ、あの、どうしたんですか?」


「すいません、人様の家に勝手に。ただ、私親と喧嘩して家出してきたんで帰るところがなくて…」


なるどね、まぁこの年頃になると突発的な家出とかもあるか


「そうですか、まぁ1日ぐらいしたらお互い気が落ち着くかもしれませんね。さっき出てきたんですか?」


「いえ、もう1年ほど前に」


「ガチすぎんだろ!捜索願い出されてるレベル!」


「いえ、もうお互い肋骨折ったり鼻血でたりの殴り合いをしたので探してないと思います」


「リアルファイトクラブですね…。キッカケはなんだったんですか?」


「それは…」


「あっ、すいません。それだけの喧嘩なら人様に話せる内容でもないですよね」


「チロルチョコのチロルは人の名前かどうかって意見が別れて」


「もう帰れよ!」


「名前に一票!」


「黙れ昌喜!」


「まぁどんな理由にしろ一度拗れてしまった糸はゆっくりと解いていくしかないよね。人生長いようで短いが先がどうとかより今どうしたいかで行動するのも若い特権だろ」


「麻美さん…」


「なぁ、君、私は麻美。良かったら好きなだけここにいればいい。私は歓迎するよ」


「俺は昌喜ってんだ。歓迎するよ」


その女の子はまた少し困ったように微笑んで


「ありがとうございます!」と言った


ってか話勝手に進んでるけど、ここ俺んちな!


そんな視線に気付いたのか彼女は僕に歩み寄ってきた


「あの…駄目、ですか?」


そんな潤んだ目で見られると…


「うぐぅ、はぁ、まぁいいよ」


「あ、ありがとうございます!」


ほんと、やれやれだよ

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