第247話 模擬戦?

 いやあ、昨日は酷かったね。機体の燃料がビンゴの警告(帰還の最低燃料到達)が出るまで急降下を繰り返したからねぇ。しまいには夕日に反射したオーガの角で移動するオーガの群れを見つけて本当の急降下攻撃をバルカンで仕掛けていたからね。


 僕は気配察知で気付いていたけど、音速に近い速度で上昇中なのに目視で気付くなんて本当に“魔王”だよね。あ、ちなみに僕達の世界の魔王様は、イルブレナック魔王国のような国の王様として使われるよ。だから、意味が違うんだよねぇ。まぁ、災いを成すという意味ならまだ現れていない“邪神”に近いかなぁ。


 それで、基地に帰還したら機付長さんが助走をつけて降機したばかりのルーデル大佐にドロップキックを喰らわせていたよ。Gリミッタは大佐が勝手に切ったみたいだったからね。それにあんなダイヴをするとは聞いてなかったみたい。その後の簡易検査で主翼にシワが寄っていて精密検査では主翼桁が歪んでいたんだってさ。おかげで、その機体は部品取り用になって、新しいF-15Eを1機【召喚】したよ。


 そして、今日は龍騎士(ドラグーン)の適正無しとして陸上部隊として運用される人達の訓練を見ているんだけど、飛龍(ワイバーン)と相性が悪かっただけだったり高所恐怖症だったりで戦闘能力ということでは全く劣らない人たちだから激しい木剣や木槍で打ち合いをしている。勿論、武器以外は完全装備だよ。


「よし、僕も参加しよう。」


 そう言うとボブが暗黒微笑で、


「死人を出すおつもりで?」


 と聞いてきた。失礼な。ちゃんと手加減するよ。多分・・・。


「大丈夫、大丈夫。」


 僕はそう言いながら殺気を放ちつつ訓練をしている皆のところへ向かう。後ろではボブがため息をついて大声で指示を出す。


「ガイウス閣下が訓練に参加される!!全員、目標はガイウス閣下に一撃。誰でも構わん。【魔法】も許可する。一撃入れば、そこで訓練終了だ!!」


 さて、僕の殺気にあてられても正気を保っているのは素晴らしいね。すぐに距離を縮めようと走り出した瞬間に、ファイヤーボール、ウォーターボール、ストーン、そして目には見えないウィンドウアローかな。まぁ、様々な【魔法】が僕に向かって放たれる。すぐに身体に魔力を纏って素手で直撃しそうな魔法を払いのけていく。


「くっ、遠距離攻撃では有効打を与えられないぞ!!」


「突っ込むか!?」


「相手はガイウス閣下、お1人だ。大勢で向かっても、対峙できるのは10人以下だ。連続で接近戦を挑むしか方法は無い!!」


「よし、それぞれの班で攻撃を加えよう、第1小隊第1班いくぞ!!」


 判断が早いね。早速第1班とぶつかる。大柄な訓練生2人が僕の突進を受け止める。けど、僕はぶつかると同時に掌底を2人に当てて吹き飛ばす。勿論、手加減をしているからお腹に風穴が開くことはないよ。


 そして、2人が吹き飛ばされている隙に残りの8人が僕を囲み、すぐに刺突を繰り出してくる。しゃがんで躱して、地面に拳を叩きつける。衝撃で大地が揺れて少しひび割れる。バランスを崩すかと思ったけど、踏ん張ったね。流石だ。でも、隙はできた。


 僕は右利きだから右腕を思いっきり振って当てることのできる左側の訓練生1人に狙いをつけて鎧で守られている左脇腹に手刀を撃ち込む。体をくの字にして左に吹き飛んでいく。これで3人。


 僕も武器が欲しいので目の前にいる訓練生にしゃがみ込んだ状態からの起き上がりの勢いをつけた膝蹴りを喰らわせて木槍を奪い取る。4人目。崩れつつある包囲網を2班が再構築しようとしているね。うん、軍隊らしくて何よりだ。ま、フォルトゥナ様のおかげで僕のほうが強いんだけどね。なんかゴメンね。


 そんなことを考えている間に木槍で刺突を2連撃。第1班は6人退場っと。さて、残りの4人はどうするかな?


「第1小隊第1班は負傷者を救出しつつ後方に退却!!第2班は包囲網を再構築、第3班は第1班の後退を支援!!」


 おっと、この声は2級冒険者の称号を持つアダーモさんだね。駆けつけたのかな?


「私がこれより、対ガイウス閣下戦の指揮を執る!!包囲網に加われない部隊は【魔法】攻撃を絶やすな!!味方に当てなければいい!!目標を同じ人間だとは思うな!!目標の動きを制限しろ!!」


 僕は人間だよぉ(まだね。)しかし、指揮官級の人間が加わるだけで動きが更に洗練されたね。さっきの自分たちで考えて行動するのも大事だけど、指揮官の命令の意味をくみ取って行動にうつすのも大事だもんね。


「閣下、御免!!」


 そんなことを考えていると包囲網の中から2mほどの木剣を振り下ろしてきた女性訓練生がいた。彼女の一言で意識が戦闘に引き戻される。


「不意打ち上等。だが、さっきの一言は余計だったな。」


 辺境伯モードでそう言って彼女の木剣の腹を裏拳で殴り剣の軌道を逸らす。それと同時に木槍で刺突を与える。彼女はガシャンガシャンと盛大に鎧を鳴らして吹き飛んでいった。


「怯むなよ!!お前たちも十分に強い!!自信を持て!!」


 アダーモさんが鼓舞しながら近づいてくる。う~ん、アダーモさんに包囲網に加わられると厄介だねぇ。でも、さっきのアダーモさんの指示で【魔法】攻撃が激しくなっているんだよね。包囲網の訓練生が僕に接近しづらくなったように、僕も当たりそうな【魔法】を弾かないといけないから攻撃の手数が減ってしまっているんだよねぇ。


 そして、とうとうアダーモさんが包囲網に加わってしまった。アダーモさんの一撃は速くて重い。そして、変幻自在だ。これ、あれだね。人間用と魔物用の戦闘術を合わせているね。お互いに何合を打ち合い、僕の場合は横からの他の訓練生の攻撃も捌(さば)かなければならなかったから決着がつくまでには時間がかかってしまった。


 結果的には時間切れで襲撃を行なった僕の負け。ボブ曰く、


「閣下は善戦されましたが、手加減しすぎですな。30分ありこのように拠点の近くであれば龍騎士(ドラグーン)の緊急出撃(スクランブル)が間に合います。ですので、今回は訓練生たちに増援が到着したと判断し、また、7割の戦力を残しているので戦力差での閣下の判定負けです。」


 とのことだったよ。実戦だとまだ増援があるんだろうけどね。騎兵とか歩兵とかも強行軍をすれば間に合うもんねぇ。うん、でも、訓練生たちが強くて安心安心。


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連勤させるならもう少し給与を上げるか手当を付けて欲しいなぁ・・・。

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異世界の神様からチート能力?を貰いました。 @kunibasira

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