夕焼け色に染まるころ。

雨世界

1 私たちも、いつか大人になるんだね。

 夕焼け色に染るころ。


 プロローグ


 私たちも、いつか大人になるんだね。


 本編


 ……私たち、立派な大人になれるかな?


 夕焼け小焼け


 三好千秋がいつものように自分の自室で音楽を聞きながら勉強をしていると、とんとんと千秋の部屋のドアがノックされた。

 千秋はヘッドフォンをしていたのだけど、音楽の音量をそれほどあげていなかったので、そのノックの音に気がついて、「はい。どうぞ」と言って後ろを振り向くと、部屋のドアが開いて、そこから千秋のお母さんが顔を出した。

「千秋。友達が来てるよ。聖くん」にっこりと笑ってお母さんは言う。


「……わかった。すぐ行く」少し顔を赤くしながら、千秋は言った。

 それからお母さんがドアを閉じていなくなると、千秋は外に出る準備をした。とは言って、勉強していた机の上の勉強道具を片付けて、それから上着を一枚羽織っただけで、千秋の外出の準備は完了した。

 それから千秋は小物だけをポケットの中に入れて、バックもなにも手に持たないで、自分の部屋を出ると、とんとんと階段を降りて二階から一階に向かった。


 階段の先はすぐ玄関になっていて、そこにはお母さんの言った通り、聖くんの姿があった。

 千秋の幼馴染で、一個下の男の子。向島聖くん。


 千秋は今年十四歳で中学二年生。聖くんは一個下で今年十三歳の中学一年生。つまり、聖くんは千秋の同じ中学校の一年後輩になるわけでけど、相変わらず聖くんは「千秋。遊びに行こうぜ」と子供のころのまま、そんな風に千秋のことを呼び捨てにしていた。

「はいはい。いいよ。わかった」

 そう言って、ポケットに両手を入れたまま、はぁーとため息をついて千秋は言った。


「お母さん。ちょっと外に出てくる」千秋は家の中に向かって少し大きな声で言う。

「はーい。言ってらっしゃい」と声だけで千秋のお母さんは返事をした。(ばいばいと振っている手は見えたけど)


「じゃあ行こうか」千秋は言う。

「おう。行こう」にっこりと笑って、サッカーボールを持っている聖くんは言った。

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