この作品が読者に何を求めているのかということも、読み進めながら気付いていくこと自体が楽しみになる作品です。何をしてほしいか気付いたら、そこからはどうぞ注意深く。ゆっくり、時々立ち止まって、少しずつ考えを巡らせてみてください。
娘には二人の見えない友達がいる。イマジナリーフレンドを題材に、先の読めないSF的展開がぐいぐいと読者を飲み込んでいく。細部まで練り上げられた設定と、無駄なく散りばめられた伏線。素敵な結末の余韻にひたりつつも、どこか腑に落ちない読者。解答編の後出しが何とも心憎い。いや、憎たらしい(笑)。これをリアルタイムで体験出来なかった人達は本当に勿体ないことをしたと思う。小説を通して読者を楽しませようとする作者のサービス精神に感服!
もし貴方に子供がいらっしゃるなら見に覚えがあるのではないでしょうか?いえ、もしかしたら貴方自身にも。子供達の空想は果てしなく優しく、そして何よりも自由。もしそれが……空想じゃなかったら?なんて素敵なことじゃありませんか?ほら、貴方も思い出してみてください。昔一緒に遊んだ彼や彼女のことを。遠く海を越えた場所の友達のことを。
※作品は絶対評価したいので星の数は全部二つです。イマジナリーフレンドを巡るSFで、長編だと奇人変人変態偏屈な、倫理観のネジをどこで落としてきたんだと言いたくなる人物をたくさん書いてきた作者が紡ぐ、ハートフルな短編。読み終えて、爽やかな気分と共に押し寄せる一抹の不安がありますが「まぁ、これでいいのだ」と思いました。多分それでいいんだと思います。