Ami

作者 文月八千代

68

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★★★ Excellent!!!

緊迫感溢れる展開から優しくゆっくりとしたオチへ流れていく物語構成がとにかく素晴らしいです。

まとめ方転がし方、何よりも動から静への描き方。

見事のひとことです。

タイトルの意味が、読むと理解出来る作品には、個人的には商業Web問わず、秀作しかないと思ってます。

この作品もまさにそうでした。

★★★ Excellent!!!

生まれてからずっとシェルターで生きてきた少女がいた。

ある日、彼女は共に暮らしていた祖父を失くし、しかもシェルターの管理AIまでをも失う危機に陥る。

この危機を回避するには、設定されたパスワードを入力してシェルターのメインコンピューターにアクセスするしかない。制限時間は一時間。

果たして、彼女はパスワードを見つけ出し、シェルターのAIを復旧させられるのか?


シェルターという閉鎖環境で、たった一人で危機に立ち向かわなくてはならないというシチュエーションがまず秀逸でした。頼れる見方もいない状況で、ほぼノーヒントの状態でパスワードを探し当てられるのか、ドキドキしながら読ませてもらいました。

そしてラストシーン……彼女ともう一人、唯一の“友人”と言ってもいい存在との会話。これがどこかものかなしく、しかし明るい未来を想起させる、不思議な読後感を残してくれます。

本文によると、このお話はクリスマス(ちょうど彼女の誕生日らしい)直前の出来事らしいです。きっとこの事件は、20歳の誕生日を迎える彼女への、神様からの驚くようなプレゼントだったのでしょう。

誰もいなくなった世界で、それでも大人の階段を登り始めた少女の成長譚。ぜひご一読ください。

★★★ Excellent!!!

閉鎖環境。タイムリミット。完全なる孤独感。
それらがない交ぜになって焦燥と絶望を駆り立てている演出が見事です。
かと言ってギリギリと責めてくる厳しさはなく、極限状態であるのにどこか安心して読んでいられる文体が、ラストの謎解きを軽やかな読後感を与えてくれます。
これからもずっと見守っててくれるんですね。

★★ Very Good!!

 主人公は袋のネズミである。ただし、安全が保証されているところの袋のネズミである。いや、『だった』。
 本作が真に優れているのは、ある種のサバイバルサスペンスももちろんながら、『袋』そのものの再確認であろう。これはもう、陳腐な例えで恐縮ながら、子宮とでも呼ぶ他ないではないか。
 詳細本作。

★★★ Excellent!!!

突然の祖父の死、そしてメインコンピューターのダウン。復帰させるには制限時間内にキーワードを入力すること……。
緊迫した状況の中にどこか余裕を感じるのは本作の文体のおかげでしょうか。冷静に綴られた文章は「もしかしたら時間切れになってしまうかも」という不安をあおりまくるよりも効果的に物語の質を高めていると思います。そして、何よりも読み進めていくとわかる本作のあたたかさ。この良さはもっと沢山の人に知ってもらいたいものですね。