ふれたら、さいご

@Edelman

第1話 いつもの夢

最近、夢を見る。知らない人と、僕が笑う夢。顔も声も、その人が男の人なのか女の人なのかも分からない。ただ分かるのは、僕は…その人が、大好きだということ。そして、その人にふれようとして、そこで……

ドンドンドン!

「ぅわっ」

「純夏!いつまで寝てるの?!冬休みだからって昼過ぎまでなんて寝かせませんからね!」

「…はぁい」

……またこうなった。この夢は、いつもあの人にふれることができずに終わる。毎年、冬でも特に寒い日になると見る夢だ。悪夢じゃない、むしろあたたかい気持ちになる夢だ。

「…あ、雪!」

ふと窓の外を見れば、うっすら雪が積もっている。今からなら、まだ地面も凍っていなさそうだ。

「……冒険日和、だよね?」

にんまり、と1人ほくそ笑むと、急いで着替えて装備品をクローゼットから取り出す。

装備品はコートと帽子、雨でも雪でもすべらない長靴、スコップ、双眼鏡。

「純夏ー?!!」

「やばっ……、いまいくー!」

これもいつものこと。お母さんにおこられて、急いで部屋を出る。そしてこの頃には、あの夢のことなど、きれいさっぱり忘れているのだ。

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