第12話 皆のエール
そんな中、クラスの議題は次へと進んでいく。
選曲が決まった。
皆が選んだ曲は
#エール#
゛エール゛
今の私の心境を書いたソング。
「では歌を一度、聞いてみましょうか。」
先生も歌詞を確かめるように歌いながら
聴く。
びっくりするくらい、心地よく
びっくりするくらい、いい歌だった。
最後の曲、そう思える曲だった。
皆のリクエストで、美咲ちゃんが
指揮者になった。
指揮者に合わせて、私達はポツポツと
歌い出す。
「大きな声でお腹から声を出して!!
体でリズムを感じて!
縦ノリじゃなくて
そうそう、横のりのリズムで!!」
先生が真剣に言うが、まだだめだ、皆、乗ってこない。
美咲ちゃんが、体と足でリズムを取り
指揮棒をふる。
なべ君も、皆の歌う声も、低い音で
楽器のように奏でている。
私もピアノを弾いてるような気持ちで
合わせてく。
「感情がこもってきてるわよ。はい、そこはもう少し高い声で…、ラララ…。」
何もない、根拠もないところから、一つになっていく感覚だ。
゛エール゛
という歌詞が、一年生最後の生活に強く
深く胸に刻まれていく。
私への゛エール゛
これから先、どんなことががあるのか…。
今、味わってる気持ちはとても苦しい。
毎日が忙しくしてるが、残りの日を
楽しく過ごしていけるのか…。
わからない…。
今の自分に゛エール゛を送ろう。
頑張っていける気がする。
本番当日。
それまでの私達は、早朝練習、放課後練習、
と毎日が続いた。
結局、私達のクラスは、くじで最終組に歌う事になった。
「皆、一つになって頑張ろう!!!」
先生が熱い眼差しで、全員の顔を見渡し
拳に力を入れる。
先生が舞台の方へと向くと、生徒らは
ゆっくりと歩き出した。
ドキドキ、不安、興奮の波が
一気に押し寄せる。
舞台に立つ。
私のピアノが指揮者の合図に合わせて
音が滑り出す。
もうあとには戻れない。
時を刻み、音符が飛び回る。
歌が動き出す。
゛音と歌が重なり合って、心が一つになり
動き出すのよ゛
先生の気持ちも伝わり、たくさんの心
が現れる。
音が皆を引っ張っていく。
高くて近い、低くて遠い歌声が響く。
辺りは一同、静けさに包まれ
拍手が大きく聞こえた。
皆は肩で息を切らしてる。
もう終わったのだ…。
一心同体で歌った歌。
皆で歌った歌…。
人生、生まれて初めての傑作だった。
ぶるっと震えてる私を、なべ君がトントンと肩を叩いてくれた。
「良かったよ!!」
ふっくらとした私の頬…。
はち切れんばかりの胸の鼓動…。
まるで夢の中にいるみたいだった。
眩しいくらいの舞台の上から
司会の先生が結果発表する。
「優勝は…。」
「二組のーエールです!!!」
「やったぁ~!!!!!!!!」
皆は手と手を取り合い喜んだ。
夢を掴んだ瞬間だった。
皆にエールを送ろう…。
そしてもらおう…。
僕らは僕らの時代を生きている。
あと一ヶ月もすれば、別々の道を行く
私と皆。
゛教室でもう一度歌う最後のエール゛
かわらない皆の笑顔だった。
おわり。
続・交換日記 恋下うらら @koimo
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