最終項目

 あれから二年が経って、僕は次代の勇者として世界をまわって悪いものを退治していた。


 どうしてだろうか、想像していたものと違うような気がしてならない。

 結果として、僕は世界を平和にするため魔法を使って勇者様の手伝いをした。しかし、僕が思い描いていた想像と今の現実は全然違うところにある。


 不思議でならない。


「あのすいません!僕は勇者です!近くに悪いものが出たので避難してください!ケガするかも知れないんで!」


 するとすぐそばまで、少年がかけよってくる。


「なんでケガするの?」

「それはね、僕が魔法を使うからね」

「悪いものを全部やっつけるの?」

「そうだよ、悪いものをやっつけるために魔法を使うんだよ」

「……すっげぇぇぇ!」


 少年は目を輝かせていた。何がすごいものか魔法っていうのはただの力でしかない。

 力で解決してるってことは、問題自体は何も解決してないんだよ。問題の先延ばし、いずれいつかはその問題がまたやってくる。


 勇者になってうんざりとするほど知った。悪いものが消えたと思ったら再び出てきて、魔王が倒れたと思ったらまた出てくるんだもの……。


 平和って難しいなぁ。

 魔法なんてなくなればいいのに。魔法なんてあるからみんな悪さをするんだ。


「……魔法は恐ろしいもの」


 ふと、僕の口からは何年か前に聞いた言葉を呟いていた。少年には聞こえていなかったようだけど。


 よかった。なんでっていま少年に聞かれていたら僕は答えられなかった。

 あの時の勇者様もこんな気持ちだったのかな。


 苦笑いしながら僕は少年に微笑んだ。


「……すっげぇぇぇ!」


 少年の目は輝いたままだった。



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不透明なゲンソウ 猫のまんま @kuroinoraneko

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