項目、3
「お前に教えられることはもうない!」
魔法使いのおじいちゃんのところ来て早三年が経った頃だった。
早く魔法を覚えなきゃと、一心でおじいちゃんの真似ばかりしていたら気がついたらおじいちゃんと同じ事ができるようになっていた。
そんな中、おじいちゃんは僕に焦った様子で言ってきた。
「でもまだ完璧にできないよ?」
おじいちゃんと同じ魔法が使えてはいるが全く同じというわけではない。
「いい、いい!お前はできている!」
おじいちゃんのお墨付きをもらった。
「…これ以上育ったらわしの威厳がなくなるわい」
おじいちゃんは僕が一人前になれてほっとしていた。
「これで勇者様のお手伝いができるんだね!」
「勇者の手伝い…あぁそういえばそういうことも言っていたな。戯言だと思ってあまり聞いていなかったが」
「おじいちゃん、ひどいー。僕は本気だよ!」
「あーはいはい」
おじいちゃんはこう言いながらきっと僕のことを考えてくれているだろう。そうしないと魔法なんて僕に教えないよね。
「…やっと静かに一人で暮らせるわい」
おじいちゃんは僕が知らないうちにまた大きなため息をついていた。
僕はすぐさま冒険に出た。勇者様を探すたびだ。
ある村によったときは北へ向かったと言われた。そして、ある村では東に向かったと言われた。また、次の村では南の村へ向かったと言われた。
とうとう次の村では西のお城に向かったと言われた。
気がつくと魔王のお城という場所に僕はついていた。
そこはとても薄気味悪く、今にも悪いものが出てきそうな雰囲気がある。
「あの~……こんにちは~……」
誰もいないようだ。扉は開けたままで無用心にもほどがあると思えた。
魔王はよほど自分の力に自信があると感じる。僕なんかは一瞬で吹き飛ばされてしまうだろう。
「入りますよぉ~?」
返事がない。多分留守だ。
「勇者様いますか~?」
もしかしたら、勇者様が先に魔王のお城にきて魔王を倒してくれているのかも知れない。僕も勇者様のお手伝いできるように急がないと。
急ぐために、僕は目の前の扉からではなく空を飛ぶ魔法で上から向かった。魔王というのは悪いものたちの偉い人だから上の方の部屋に違いない。無駄に豪華な部屋だったりするかも。
すると、魔王の居そうな部屋はすぐに見つかった。自信のある人だなと思った。
特に何の障害もなく、窓から魔王のいる部屋と思われる場所に入った。
そこには勇者様が剣を構えて僕の方を見ていた。
「だ、誰だ!!」
すごく警戒してるようだった。
「勇者様!お待たせしました!今、助太刀に参りました!」
僕はこの時は待ちに待っていた。勇者様の前で僕はひざまづき、こうべを垂れる。
「え……誰?」
勇者様は呆然と立ち尽くし、構えていた剣も思わず下げてしまった。
「わからないでしょうが僕はあなたに救って頂いた、ただの村人です……いえ、今では勇者様と同じ魔法を使える魔法使いです!」
「え、は? 村人? 魔法使い??」
勇者様は驚いていた。無理もないだろう勇者様にとっては僕は救ってくださった村の一つの村人でしかない。
しかも、二年もあのときから経ってしまっているのだ。わからないのは当然だ。
「魔法に憧れて、こうして魔法使いにもなれて……あとは勇者様をお手伝いするだけです!」
「だ、だから君は誰なんだ!君の名前をおし」
勇者様が話している途中に勇者様の背後から黒いもやのようなものが動き始める。
「……ふはははは!! 勇者よ! 我の力がこんなものだと思ったか!我には真の姿が」
「うるさいな。今、僕と勇者様が話しているんだ。ちょっと黙ってて!」
勇者様の後ろの黒いもやに魔法の玉を投げ込む。
「ぐぁぁぁぁぁ!! そんなバカな! この我が! 真の姿を見せてまでやられるとわぁぁぁぁぁ!!」
よく黒いもやの姿は見えなかったが、どうやら消えてくれたらしい。これでやっと勇者様とゆっくり会話ができる。
「それでですね勇者様、僕は……」
勇者様の旅に連れて行ってほしいですって言う前に勇者様に腕を捕まれた。
「君こそ本当の勇者だ……!」
……え?
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