項目、2
僕は魔法の練習をはじめた。勇者様が使った魔法を使えるようになるために。
そして、その魔法を使って勇者様の手助けになるように頑張りたい。
だけど、どうしたらいいのだろう?
いくら走ったり、腕や足を鍛えても魔法が使える気はしなかった。体力は増えた気がする。
そんな魔法の練習に行き詰まっているころ一つの噂が僕に飛び込んできた。
東の森にながれついた年老いた魔法使いがいる。
村人たちが噂していたことを僕は通りかげに耳にした。
そのことを聞いてからは僕はすぐさま準備をして東の森に向かった。
この森は、うっすら暗く昼間なのにあまり日が差し込まない陰鬱とした様子だった。
そんな中を僕は怖がりながらも進んだ。
しばらく進むと木の家が見えてきた。中は明かりがついているのか、窓から光が漏れている。
僕は恐る恐る、ドアをノックした。するとしばらくしてローブをきたおじいちゃんが出てきた。
「なに、ようか」
おじいちゃんは短く僕にそう告げた。多少緊張しながらも僕は元気に答えた。
「魔法使いのおじいちゃんです…よね!僕に魔法を教えてください!」
挨拶するのを忘れた。はなし終わったあとに気づいたがどうしようもない。
「…だめじゃ」
「そこをなんとか!」
扉を閉めようとするおじいちゃんだったが、僕が手で扉を閉めるの止める。
やっぱり挨拶もなしに言ったのは間違いだったかも。
「こんにちは!魔法を覚えたいんです!お願いします!」
「挨拶してもだめじゃ!こら、手を離さんか!」
「いやです!魔法を教えてくれるまでこの手を離しません!」
せっかくここまで来てたんだ何も教えてもらえないまま帰れない。
僕とおじいちゃんでしばらくドアをギコギコとやっていたらおじいちゃんが先に疲れていた。
「はぁ…はぁ…なんじゃお前。意外と力が強いのぉ…」
「体鍛えてますから!」
魔法使いは体鍛えなくていいだろうか。みる限りおじいちゃんはヘトヘトになっていた。
「ですから、魔法を教えてください!」
「何がですからか、わからんのじゃが…」
魔法使いのおじいちゃんは息を整えて僕の方を見た。
「…才能ないから無理」
「そんなぁ!」
再び、扉を閉めようとするおじいちゃん。それを止める僕。
「なんでですか!おじいちゃんのケチ!」
「ケチでもいいから扉を早く話すわい…!」
数分後、またおじいちゃんが疲れて果てていた。
「…ふん」
おじいちゃんは息を整えてから立ち上がり家の奥へと消えていった。
入れってことかな?
「お邪魔しまーす!」
おじいちゃんの家の中に入るといろんな道具が置いている場所や本棚にいっぱいの本があった。
「…なんの躊躇もなく入ってきたな」
「扉はちゃんと閉めましたよ?」
「そんなことは言っておらんわい!」
おじいちゃんは疲れた様子で椅子に座っていた。お年寄りは大変だなぁ。
「お前さん、親は?早く帰らないともっと暗くなるぞ」
「いません、なので魔法を教えてください!」
「な、なにがなのでじゃ…」
おじいちゃんはさらに疲れた表情になった。
「教えてくれるですか?くれないのですか?…くれないって言っても帰りませんけど」
「…はぁ。」
こうして、僕とおじいちゃんとの生活が始まり。最初は嫌がっていたおじいちゃんも僕に魔法を教えてくれるようになった。
「おじいちゃん見てます?ほら、魔法が使えるようになりました!」
僕は指先で魔法の玉を転がす。魔法の練習を当初は苦戦していた僕だったがおじいちゃんが教えるの上手でドンドン上達していった。
「あーはいはい」
そんな様子を最近じゃ、おじいちゃんは無視するようになっていた。
「…なんであやつはわしの無理難題をできるようになったのか不思議でならない」
おじいちゃんは僕といるとき独り言が多い、僕が目の前にいるんだから会話してもいいのに。
「おじいちゃん、返事がテキトー」
「まともに話していたらわしがおかしくなるわい」
「おじいちゃん、お話してないとボケていくよ?」
「何をー!」
おじいちゃんが僕に向かって魔法の玉をうってくる。僕はそれを指先の魔法で打ち落とす。
「ほら、おじいちゃん!またできたよ!」
「…ふん!」
これで今日は30回目の魔法の打ち落としに成功した。おじいちゃんは素直じゃないからこうして僕がおじいちゃんに促さないと魔法を教えてくれないのだ。
「…なんでこうもいとも簡単にわしの魔法を打ち落とすかな」
ほらまた放っておくとおじいちゃんが独り言を言ってる。いつも僕にはよく聞こえないけど。
「ねぇ、なんて言ってるのー?」
「教えてやらん!」
「えぇー」
おじいちゃんは頑固だ。でも、すごい魔法使いには違いない。家にある魔法の書かれた本も全部覚えているし、魔法の道具も大抵は片手で操作している。すごいなと思う。
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