『悲劇を理解できないものの人生』は、果たして悲劇か、喜劇か

人を悲劇的な人生へと導く〝案内人〟を生業とする人のお話。
ジャンルとしては『現代ファンタジー』なのですが、そのファンタジー度合いの方向性というか、匙加減のようなものが好みでした。
キラキラした壮大な幻想でなく、また単なる話のギミックとしてのそれでもなく、どこか童話や寓話のような味付けのファンタジー要素。人の人生を喜劇や悲劇に導く〝案内人〟という、その設定そのものにとても魅力を感じます。
終盤、このお話の軸となる『サラ』の存在。すでにして悲劇的なようにも見える彼女の境遇や現状のおかげで、どうしても考えさせられてしまいます。
悲劇とは何か。反対に、どういうものを喜劇と呼ぶのか。こういう問いを自然に想起させてくれる物語は、やっぱりいいお話だと思います。