第4話 身体で払わせる?
「ほら、着いたぞ」
東北支部から電車で二駅と徒歩で20分程離れた場所にアパートがある。そこが俺の住まいだ。
中はリビングとキッチン、それから寝室が一部屋と一人暮らしには十分な広さをしている。因みにトイレと風呂は別。元々このアパートの寝室は和室だったが、布団よりもベット派の俺は大家さんに頼み込んでなんとかフローリングにしてもらった(改修費はもちろん俺もち)。
「ここが……私のお家?」
「お前のじゃなくて俺の……いや達か?というか何で俺の家に……」
「私、迷惑?」
「あ、いやそうじゃなくて……」
「迷惑なら……野宿する」
「待って!本当にちょっと待って!!」
野宿なんてさせてみろ!その瞬間あの鬼ババアに俺が殺される!
あの鬼ババアはそういうババアだからだ!
「迷惑じゃないから!」
「本当?」
「ほんとにホント。ほら入って」
よし、なんとか野宿は免れた。
ってあれ?そういえば俺の部屋に女の子入れるのって初めてじゃね?
「お邪魔します……」
「どうぞどうぞ」
まぁ普段から整理整頓しているからそこまで汚れてはいないだろう。
「腹減ってないか?」
「大丈夫……それよりも眠い……」
ここに来る途中でもそうだったけど、彼女は気を抜くと直ぐに眠りにつく。
もらったデータによると、どうやらあれが原因で彼女はそんな風になってしまったみたいだ。
「なら俺のジャージとか貸してやるから、それを着て今日は寝てくれ。明日は先ず日用品とかいろいろ買いに行くから」
というか、なんで手荷物も何にも無い状態で俺の家に住まわせようと思ったんだんだよあの鬼ババアは。
「私……お金ない」
「あー……その辺は気にしなくて大丈夫だ」
「身体で……払わせるの?」
「そんなわけあるか!?」
身体で払えって俺は変態か!?
というか、データによると彼女の年齢は16歳だぞ!?21歳の俺が手なんか出したら犯罪で捕まるわ!
「なら……私、戦わなくていい……の?」
「え……」
あ、身体で払うってそっち……?
やばい、俺はとんでもない勘違いをした。恥ずかしい。死にたい。
「赤く……なってる?」
「そっとしてくれ……」
くそ!とんだ勘違い野郎だよ俺は!
「お前の日用品とかは全部あの鬼ババアに経費で落としてもらうから、安心しろ」
「分かった。……あと、お前はやだ。……しずか」
「いきなり名前呼びか?せめて苗字の旭に――」
「しずか」
「……あさ――」
「しずか」
「……はぁ。分かったよ。静香」
名前で呼ぶと納得しようで、静香はコクリと頷く。
「……ところで」
「ん?どうした?」
「私、貴方の名前……知らない」
そう言えばまだ俺の名前教えてなかったな。
「春樹……俺は藤木春樹だ」
「はるき……。よろしく」
「呼び捨てってまぁいいけどさ。よろし――」
「スー……スー……」
えぇ……。このタイミングで寝るか普通?というか――。
「立ったまま寝るな!」
「あう」
立ちながら眠る静香に軽くチョップ!というか立ちながら寝るってどんだけ器用なんだよ。
その後、とりあえず静香にシャワーを浴びせている間に着替えを用意しリビングのソファというわけにはいかないので、俺のベットに寝かせるようにした。あれ?もしかしてこれからずっと俺のベット占領されるのか?
静香が寝付くと、俺は一人リビングで静香のデータに目を通していた。
「『――半年の観察の結果、魔力の制御は不安定。要経過観察が必要』か……」
静香にあれが起きたのが半年前。
俺の身にも起きたけど、当時の俺はまだもの心がつく前だったてのもあり、そこまで辛くはない。
でも静香は違う。きっと辛い半年間を送ったんだろうな。
似た境遇の人が傍にいれば、彼女の魔力制御のきっかけが掴めるかもしれないって、あの鬼ババアは考えたんだろうな。
だから俺のもとに彼女を付かせたんだろう。
俺も彼女も――。
一度魔力が暴走した者なのだから。
ヒューマガーディアン 1から20 @hibikiya
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