第3話 面倒ごとを押し付けられた

「ぜぇ……ぜぇ……」


 な、何とか間に合った。

 30分以内で何とか仙台駅の地下深くにある東北支部まで戻ってこれた……。

 魔法を使ってかなりの速度で空を飛び、仙台駅に着いてからは全力疾走でこの支部長室の前までやってきた。後は中に入るだけだ……。あの鬼ババア、いつか見てろよ……。


「失礼しま――」

「遅い!23秒も遅刻だ!」

「がはっ!?」


 支部長室の扉を開けた瞬間に分厚いファイルが一冊顔面に飛んできた。


「いいじゃないか23秒くらい!細かいこと気にしてるとシワがまた増えるぞ!」

「あ˝ぁ˝!?なんか言ったか?」

「い、いえなにも……」


 こわっ!?

 どんだけ目力あるんだよ。もうその眼光だけで魔人や魔獣倒せるだろ。


 それにしても、相変わらず忙しそうだな。

 支部長室のデスクの上で書類が積み重なっているし。

 パソコンから全く目をそらしてこちらを見ようともしない。

 なのにどうやって正確に俺の顔面にファイルをぶつけられるんだよ……。


「あの支部長」

「なんだ?」

「急いで来いって言われたから急いできたけど、俺まだ魔人討伐の報告上げてないんですけど」

「それなら私が済ませておいた」


 マジか!面倒な報告しなくてラッキー!

 というかそれくらいしてもらわないとな!うん!


「なら、早速俺を呼んだわけを聞かせてもらえませんか?」

「少し待て、もう少しでこれが終わる」


 なんだ?緊急の仕事でもきたのか?


「忙しそうですね」

「まぁな。もう少しでこのステージのボスを倒してクリア出来そうなんだ」

「あんた何してるの!?」


 仕事しているのかと思ったらこの鬼ババア、パソコンゲームしてたのかよ!?


「いけ!そこだ!……よし。む、私よりクリアタイムの速い奴がいるな。《黒炎の使い手》だと!?中二ネームの分際で……!こうなったら私の方が早くクリアできるまで――」

「せめて仕事をしてくれよ!?」


 なんだこの鬼ババア!?

 自分で30分以内で来いとかいいながらずっとゲームしてるし!せめて仕事をしてくれよ!?


「はぁ、しょうがない。《黒炎の使い手》のタイムは後で超すとしよう」


 しょうがないのはあんただよ……。


「さて春樹、お前を呼んだのはある特殊任務をお前に受けてもらいたい。拒否権はない」


 憲法無視ですかぁ……。


「いろいろと私の方で考えたのだが、のお前がこの任務に適していると判断した」

「同じ境遇……それってまさか!?」

「そうだ。先ずは……紹介した方がいいか。おいいい加減起きろ」


 鬼ババアが支部長室に置かれたソファに向かって喋った。ついにボケがきたか?ってそんな訳ないか。

 ソファに誰かいるのか?


「ん……朝?」

「女の……子?」


 ソファに一人の少女が寝ており、眠たそうにあくびをしながら上半身を起き上がらせる。


「シャキッとしろ。ほら挨拶」

あさひ静香しずか。眠い……」


 凄い眠そうな女の子だな。


「彼女にはこれからお前の元で働いてもらう事になった」

「俺の元って⋯⋯。この子戦えるのか?」

「戦えるぞ。ちなみにお前の家に住み込みをしてもらう予定だ」


 住み込みかぁ⋯⋯は?


「住み込み!?」

「そうだ。彼女は今、住まいが無いからな」

「だからってなんで俺の家なんですか!?」

「その方が都合がいいんだ。これを見ろ。彼女のデータだ」


 鬼ババアから渡された彼女の事が記載されたプリントを渡される。

 そこには身長や体重などの、俺が見てもいいのかと思われることなども記載されていた。


「そのデータの下の方に『魔力制御に問題あり』と書いてあるだろ?」

「ええ確かに書いていますね」

「お前が傍にいれば仮に暴走しても何とか対処できるだろ?そういうことだ」


 ほうほうなるほど。

 つまり面倒を押し付けられただけじゃないか!


「というか、戦えるってさっき言いましたよね!?戦う人間が魔力制御に問題有りっていいんですか!?」

「戦えるとは言ったが戦力になるとはいった覚えがないな」


 こ、このババア……!


「そういうわけで、頼んだぞ。我が愛しい義息子よ」

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