第2話 30分

 2050年3月31日、日本東北地方宮城県にあるとある小さな町、深夜に俺はある指令を受けて今そこにいる。


「……見つけた」


 その指令とは……。


「魔人を発見。これより戦闘に入る」


 魔人の討伐だ。

 この町で一人の男性の魔力が突然暴走した。その男性はどうやらヤクザの構成員の一人で、敵対する他のヤクザとの抗争により過度な魔法の使用が暴走の原因とのことだ。せっかく人類は一つになったのにこういった小さな争いが未だに無くならないのは嘆かわしいことだ。


「グガァァァァァァ!!!!」


 魔人の身体から物凄い冷気が出ているな。

 さてはこのヤクザ、氷の魔法を使って暴走したな?

 魔法の無理な使用によって生まれた魔人は、その暴走の原因の魔法の特色が出るからな。氷の魔法の場合だとこういう感じで冷気がものすごくでる。かなり寒い。


「避難勧告が出て町民はみんなどっかに避難したみたいだし……ほら、かかってこいよ」

「グルアァァァ!!」


 魔人は地面に手を当てると、地面から氷の柱が出現して俺に目掛けて伸びてくる。


「芸がない攻撃だな。ま、自我が無いんだししょうがないか。《炎刃えんじん》」


 魔法によって炎の刃を発現させ、魔人に目掛けて放つ。

 炎の刃は氷の柱を一気に溶かし、水分を蒸発させながら魔人へと向かい、そのまま魔人の身体を綺麗に真っ二つにし炎の刃は消滅した。


 炎によって傷口が塞がれたのか、断面から噴水のようにかなりの血が溢れ出すかと思ったけど、全くでなかったな。


「討伐完了」


 まるで手応えを感じない魔人だったな。

 あっさりと終わり過ぎて思わずあくびが出そう。


『電話だ!出ろこら!電話だ!出ろこら!電話だ!出ろこら!――』


 電話?誰からだ?スマホスマホっと……げ!?


「うわ出たくねぇ……」


 何であの人が俺に直接電話をかけてくるんだよ。

 いつもはメールとかで済ますのに……」


「でも、出ないと後でうるさうざいからな」


 仕方ないか……。


「もしも――」

『遅い!私が電話をしたらワンコール未満で出ろ!」

「なに無茶言っているんですか……


 電話をかけてきたのは《ヒューマガーディアン日本東北支部》の支部長を務める《藤木ふじき紗耶香さやか》という女性だ。

 俺とこの人は一応親子の関係だ。と言っても本当の親子じゃない。でもまぁこの人のおかげで俺は今こうして生きていると言っても過言ではない。


「どうやればワンコール未満で電話に出れるんです?予知能力があるわけでもないのに」

『お前なら出来ると私は思うのだが?』

「あんた俺を何だと思っているんだ?」


 いくら俺がだからって、そんなこと出来るわけないだろ。


『下らん話は終わりにして、魔人の討伐にお前が向かったと聞いた。今こうして電話に出れるという事は、問題なく魔人の討伐が完了したということだな?』

「ええお察しのとおり、ついさっき魔人を討伐したところです」

『そうか。なら早急に東北支部に戻り支部長室まで来るように。そうだな……30分もあれば着けるだろ?』


 なっ!?たったの30分で戻ってこいだと!?

 俺今どこにいるんと思っているんだ!?

 こっから東北支部まで車で2時間はかかる所にいるんだぞ!?


「電話じゃダメですか?」

『ダメだ。残り29分。ちゃんと時間いないに来い。遅れたら……わかっているな?』

「な!?」

『では支部長室で会おう……《藤木ふじき春樹はるき》少佐――』


 プツンと通話を切られ、『プープープー――』といった音だけが聞こえる。


「あ、あの鬼ババア!!」


 俺は急いで東北支部に戻っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る