END②〜BADEND〜
ジパング。日本を示すこの名ははるか昔どこぞの冒険家が日本と言う意味で使っていた名。ジパングは建物も道も全て黄金で出来ており、皆がが豊かに暮らしていたとかなんとか言われていたらしい。
私達がバス停を降りて着いた先は、ジパング。この国では都市伝説のように囁かれている謎の都市だ。噂では、どんな人でも助けてくれる、味方になってくれる人がいる、日本に災害が起きた時の大型避難地だとも言われている。
私はイロハの手をしっかりと握り直し、ジパングが足を踏み入れた。
ジパングへと足を踏み入れた私の目を奪ったのは見渡すかぎりの黄金の輝きであった。ジパング内は大きなドーム型となっており、床も壁も天井も全て黄金に輝いている。真ん中には大きな噴水があり、その噴水を取り囲むような円形の水槽には今まで見た事のない生物が悠々と泳いでいる。噴水と水槽の土台には金が使われており、水槽内に至っては下に敷いてある砂利さえも黄金に輝いている。その黄金の輝きが水槽内の生物の体に反射してまるで金色の衣を纏っているかのように見える。
また、ジパング内の所々に置かれている植物達も金色に輝いている。私達が金色に目を奪われていると、一人の女性が声をかけてきた。
「お待ちしていました。」
その女性は笑顔が誘惑的な美人であった。シャープな輪郭に大きめな目と赤い唇、少し垂れ下がった眉、口元の黒子がバランスよく収まっている。胸がこれでもかと強調された格好が彼女を下品に見せているのが残念だ。
「情報は伺っています。早く奥へ!」
私達は彼女の後ろを足早でついて行った。着いた先は先程までの場所と違い、殺風景な部屋だった。
「もう安心ですよ。お茶を持ってくるので少々お待ちください。」
彼女は、笑顔で部屋を出ていった。
彼女が戻ってくるまでの間私はイロハとこれからの事について話した。これからは一緒にいよう。落ち着いたら何をしようか。好きな物をいっぱい見つけよう。これから待つ明るい未来の話をした。
しばらくして彼女がお茶とりんごジュースをもって戻ってきた。
「このふたつ、ここで作っている名物なんですよ〜」
「そうなんですね。ありがとうございます。」
もらったお茶を口に入れると上品な苦味とその中に混じる旨味が広がった。名物と言うだけあるなと思いながらおかわりをもらった。
イロハがりんごジュースを飲みながらうとうとしだした。今日は色んなことがあったから疲れているのだろう。私の膝を貸し、そのまま寝かせてやることにした。穏やかな笑みを浮かべながら寝ている。
欠伸が出た。どうやら彼に釣られて私も眠気が出てきたようだ。
「大丈夫ですよ。三十分後に起こしましょうか?」
彼女が聞いてくれた。
「おね…が…い…しま……す……」
薄れゆく意識の中で彼女が笑いながらどこかへ電話をかけているような気がした。
目を覚ますと私は何かの台に横たわっていた。ここはどこだろうか。イロハはどこにいるのだろうか。起き上がって周囲を見ようとした。しかし、体が動かないことに気づいた。体に力を入れても力が入らない。どういうことだ。
「対象、覚醒しました。」
男の声が聞こえた。
「─────!」
そこにいるのは誰だ!
私は確かにそういった。しかし、その言葉が音にならなかった。どういうことだ。何が起きている。
「これより投薬を行う。そのあと、腕を切断し、新薬をあたえ、経過を見る。」
「「「「はい」」」」
いつの間にか周りを男達に囲まれていた。
「──────────!!!!」
視界が塗りつぶされた。
十年後、政府の某所で新薬の、実験が行われようとしていた。
「今年は優秀な新人が多いな〜」
「そうでよね。俺、追い越されないに頑張ります!」
「期待してるぞ!我が課のホープ!」
「辞めてくださいよ〜、先輩~」
軽口を叩きながら先輩・後輩の関係にある男たちがモルモットのある部屋へ向かう。向かう道すがら、本日行う事の確認をし、モルモットの状態についても確認する。今から行く部屋にいるモルモットはE108。十年前からある人型の雄タイプのモルモットだ。
E108に本日分の薬品を打っていく。かなり強力なものを体内に入れたはずなのに反応がない。
「こいつもそろそろ替え時だな。」
「そうですね。」
カルテに反応無しと記入する。
「そういえばお前の目って珍しいよな」
血液を抜きながら聞いた。
「実はこの目、眼球ごと移植したものですよ。十年前くらいに。」
体毛を毟りながら答えた男の目は赤と緑が綺麗に混じっている珍しい虹彩をしていた。
E108(イロハ) 桧馨蕗 @hinokinokaori
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