END①〜救済END〜
ジパング。日本を示すこの名ははるか昔どこぞの冒険家が日本と言う意味で使っていた名。ジパングは建物も道も全て黄金で出来ており、皆がが豊かに暮らしていたとかなんとか言われていたらしい。
私達がバス停を降りて着いた先は、ジパング。この国では都市伝説のように囁かれている謎の都市だ。噂では、どんな人でも助けてくれる、味方になってくれる人がいる、日本に災害が起きた時の大型避難地だとも言われている。
私はイロハの手をしっかりと握り直し、ジパングが足を踏み入れた。
ジパングへと足を踏み入れた私の目を奪ったのは見渡すかぎりの黄金の輝きであった。ジパング内は大きなドーム型となっており、床も壁も天井も全て黄金に輝いている。真ん中には大きな噴水があり、その噴水を取り囲むような円形の水槽には今まで見た事のない生物が悠々と泳いでいる。噴水と水槽の土台には金が使われており、水槽内に至っては下に敷いてある砂利さえも黄金に輝いている。その黄金の輝きが水槽内の生物の体に反射してまるで金色の衣を纏っているかのように見える。
また、ジパング内の所々に置かれている植物達も金色に輝いている。私達が金色に目を奪われていると、一人の女性が声をかけてきた。
「どうかなされましたか。」
その女性はここにいるのが不釣り合いなほどに普通の、笑顔が穏やかな、人が良さそうな女性であった。彼女の纏っているスーツは私が使っているものと同じメーカーであった。緊張が少し解れた。
「私達はとあるもの達に追われています。ここに来れば力になって頂けるときき、ここに来ました。どうか、どうか!私達を助けてください!!お願いします!!」
私は頭を下げた。
「顔を上げてください。あなた達はもう安全です。」
私はほっとしながら顔をあげ、イロハを抱き締めた。良かった。本当に良かった。この子があの地獄に戻ることはもうなくなったのだと思うと涙が出てきた。
「奥に行きましょう。」
私達はその女性に先導され奥の部屋に通された。その部屋は先程までの場所と違い、どこにでもあるような殺風景な部屋だった。ここで私達は今後のことについて話し合うようだ。
「あなた方には、これから国外に逃げてもらいます。恐らくあなた方はもう二度と日本に戻っては来れません。それを承知しておいてください。」
覚悟はしていた。もう二度とこの国の土地をふむことはない、踏まないという覚悟。友人たちと二度と合わないという覚悟。改めて口に出されるとドキッとする。未練はないはずだ。両親は二年前に無くなっていし、恋人はいない。友人達は少し気がかりだが…。
「あなた方には向こうについてからふたつの選択肢があります。一つめは、貴方と男の子がそれぞれ別の場所で過ごすことです。そして、二つめは二人が同じ場所で過ごすことです。それぞれで別の場所で過ごすことになると、ここから別行動になり、それぞれのゲートで現地に向かいます。どうしますか。」
イロハが私を見上げる。私が彼と目を合わせ、頷くと本当に心底嬉しいという笑顔になった。
「二人で同じ場所…、ですね。」
私達の様子を見て、 彼女が微笑ましいというような笑顔で言った。
そして私達は、また彼女に先導されて、ゲートへ向かった。
その部屋は大きなゲートで地面をしめられていた。部屋の中央で青く輝くゲートが私たちを新たな場所へ連れてってくれる。ゲートは円柱状で壁面は硝子で出来ている。私達は手を繋ぎゲート中へ入る。
「出力五十%突破……六十五%、七十八%突破……九十五、六、七……百%達成!準備完了しました。今からあなた方を向こうに送ります。良い人生を!」
「ありがとうございます!」
これから新しい生活が始まる。イロハと始まる。
「これからよろしくお願いします!XXXさんっ!」
「幸せになろうな!」
「はい!」
二人を青い粒子が包み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます