異世界転生者スレイヤー

curuss

第1話

 醤油!

 その男は咽かえるほどな醤油の香気を身に纏っていた!

 これは最近、問題となった醤油ジャンキーか?


 否!

 いくら命知らずな醤油ジャンキーといえど、これほどに摂取して無事のはずもない!


 応!

 とばかり、男は手に提げていた醤油瓶を呷る! 凄く煽る!

 その量、もうほとんど致死量!


 でも、御安心! 大丈夫! セーフでノーカン!

 不思議なことに男は死んでない! 男は死なかった!


 そもそもが深夜だ。

 二つ月夜といえどニュー・ニホン・キングダムが首都、ネオ・トキオ・シティの夜は危ない! とても! ナイトストーカーですら棲家で大人しく!


 ならば答えは一つ!

 我が物顔に夜を歩くは異世界転移者に他ならなかった! あたりまえ! コラと叱られて月賦で支払うも同然!


 まったく御安心だった男は満足気な億尾ともに、空となった醤油瓶を放り投げる。

 ガシャン! バリン!

 瓶の投げ捨て、いくない! 悪い子が真似したら大変!


「そろそろ出て来いよ。わざわざ広い場所まで案内してやったんだぜ?」

 不敵な笑みを、嘆きの月二つ目の月がギラギラと照らす! どうみても筋の者! 超コワイ!


 しかし、草木エルフも眠るスリー・ミノタウロス・アワー!

 男以外に誰かいるはずもなかった! おかしい!

 もしや醤油のオーバードースによる幻覚!?


 だが、あなや! 摩訶不思議なエンカウント!

 闇から滲むように追跡者の姿現る!

 なんと白い大判のマスク覆面姿だ!


 それは古くはお前の管で使い古された手管!

 白い大判のマスク覆面姿で顔を隠さば、たちまち正体不明!

 そう受け取らぬ者、たちまち村で八割引き! 大変安い! 超困る!


「明けまして、おめでとうございます! 異世界転生者スレイヤーです! 謹んで!」


 そう言って覆面男は――異世界転生者スレイヤーは、お辞儀!

 なぜなら挨拶は大事だから! 一年の計は元旦! 最初に挨拶が当然!


「謹賀新年! レイ・オン・ハンドです! 喜んで!」


 男――レイ・オン・ハンドも応じる!

 挨拶は大事! そして年の初めは特別! よって最初はいつも特別!

 とにかく『開けまして、おめでと! ご自愛!』!


「く、く、く……うぬが異世界転生者スレイヤー、さんか! 最近、我ら『二年五組』を襲うという輩の!」


「うるさい、黙れ!」

 ドーン!

 なぜかどこからか大きな音! 不思議!


「貴様らに虐げられし人々の怨嗟の声! それが俺、異世界転生者スレイヤーを呼ぶ! レイ・オン・ハンド、さん、ここでEND終わり! お前をトラックの走る道路へ導いてやる!」


「トラックEND終わりだぁ? ほざけ! 轢死体めいて来世へ直行は、うぬよ! それも、なるはやで!」


 睨みあう両雄!

 嗚呼、いくさがはじまる! はじまってしまう!


 イヤー!


 先手をとりたるは異世界転生者スレイヤー!

 化鳥のごとき叫びと共に、素晴らしい跳び蹴り! 実にお見事! 天晴!


 グワー!


 応じてレイ・オン・ハンドも愛剣を振るう!

 その様、まるで竜巻! 巻き込みし者を轢死体めいたタタキにせんと!


 キンキンキン!


 堪らず異世界転生者スレイヤーは、懐から取り出した短剣にて受ける!

 もう防戦一方! これは危ない! あたかもマッド・シップで大海を往くが如く!


「見切った! 貴様……KENDOUを修めてないな! KENDOU・is・王者! ノー・KENDOU、ノー・異世界転生者! 俺の勝ちだ、異世界転生者スレイヤー、さん!」


 イヤー!


 鮮やかなKENDOU・ステッポでレイ・オン・ハンドが深く踏み込む!

 おそらく、これこそ伝説の破山剣!? とにかく凄いKENDOUの巧み!


 グワー!


 だが、しかし!

 好機とばかり異世界転生者スレイヤーが内懐へ!

 通じない! どうしてかKENDOUが、異世界転生者スレイヤーには!


 キンキンキン!


 立場は入れ替わり、もはやレイ・オン・ハンドは防戦一方!

 でも、Why? なぜ王者のKENDOUが通じない!? とても不可思議!


「まあ……御主ではわからないか。この領域レベルの業は。

 ――KOBUJYUTUって知ってるか?」


 KOBUJYUTU古武術! そういうのもある!

 とにかく強い! 原理不明! でも最強! KENDOUより凄い!


「う、嘘だ! お前は俺を騙そうとしている! これは多分、お前の特殊能力チート! 詳しいんだ、俺は! だから判る! そして俺にだって切り札チートはあるんだ!」


 そう叫んでレイ・オン・ハンドは指笛を鳴らす!

 刹那!

 どこからともなく現れた女性達に広場は囲まれる!


「貴様! 撫でたな!」


「応ともよ! 撫でたわ! それの何が悪い!」


 異世界転生者に頭を撫でられると、現地人の脳には大量のドーパミンが流れる!

 その虜となりし中毒症状者は、撫でてもらうために親すら殺すように!


「この外道が! これだけ集めるのに、どれだけの女の子を犠牲に!」


「原住民が何人死のうと知ったことか!

 ――それともうぬは、いままで揚げた唐揚げの数を覚えているのか?」


 血涙を流し異世界転生者スレイヤーは、怒りに震える!


「すまぬ、お前たち! だが、魂は! 魂だけは自由に!

 ――征くぞ、レイ・オン・ハンドさん! 異世界転生者、滅ぶべし!」


「ほざけ! ここで死ぬるは、うぬ独り!

 ――かかれ、お前ら!」


「Sasuーー! Gosyuーー!

 Sasuーー! Gosyuーー!

 Sasuーー! Gosyuーー!」


 ゾンビめいた動きで撫でポ中毒者達は、異世界転生者スレイヤーへと殺到する!

 まるで同人誌即売会かの如き様相! おつかれ様!


 そしてKOBUJYUTUを使う異世界転生者スレイヤーですら、俄かには攻めあぐねた。

 なぜなら、これはレイ・オン・ハンドの奥義!

 手足の如く撫でポ中毒者達を使い、時には盾とし、相手を追い詰める!


「Hahaha! ざまぁないな、異世界転生者スレイヤー!

 ――おい、奴が逃げるぞ! 煙幕なんぞで撹乱されるな! 熱源視インフラビジョンへ切り替えろ! 囲んで棒で叩け!」


 哀れ、異世界転生者スレイヤー!

 もはや成す術なし。三十六計逃げるに如かずなのか?


「煙幕? 違うな。これぞ我が現代技術チート奥義

 ――くらえ! 粉塵爆発!」


 BAKOOOOOOOM!


【異世界転生者スレイヤー/ネオ・トキオ編/第二章/完】

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