小鳥と私の初みかん
深見萩緒
小鳥と私の初みかん
令和二年
甘ァいみかんを木に刺しました。鏡餅の上に乗せるには、少しばっかりでこぼこで、おさまりの悪いみかんです。
それを半分に切り分けまして、ひとつを垣根の上の方へ。もう片割れは垣根の中の方へ。お空へ向けて刺しておきます。そうしますと、まずは身体の大きなひよどりが、みかんをつつきにやってきます。
羽毛のかんむりをいただいたひよどりは、我こそ王であると言わんばかりに胸を張り、みずみずしい果肉をついばみます。
しかし羽毛の王さまは、大きな翼がつっかえまして、垣根の中へは入れません。そちらのみかんを占有するのは、身体の小さなすずめです。
さんわよんわと徒党を組んで、冬の支度もしっかりと、ふくらすずめが集まります。ぴいぴいちいちい、それはたいへんにかしましく、私は私が場違いな気持ちがいたしまして、カーテンの陰に隠れたのです。
薄いレースの隙間から、すずめの初詣を眺めます。縁日屋台はみかんだけ。詣でる神もありますまいが、ふっくらふくらのすずめたち、よい正月であるようです。
さてぴーちくもおさまりまして、すっかり静かの庭先に、ささりと羽音が響きます。
薄緑色を羽ばたかせ、白ぶちめがねをかけまして、小さなめじろはつがいを連れて、そっとみかんへ降り立ちました。
互いちがいにきょろきょろと、垣根の向こうをうかがいながら、余り残りのみかんかす、ありがたそうについばみます。
ひよどり王に追い出され、すずめ娘に追い払われて、肩身狭しのつがいのめじろ、ようやくみかんにありついたのです。
きょろきょろついつい、きょろついつい。
あんまり美味そに食べるので、くれてやったのが惜しくなり、私もみかんを探します。
お餅の上に鎮座まします、形のきれいなまあるいみかん。思わず剥いて食べますが、小鳥の食べたるいびつなみかん、そっちのほうが美味そに見えるはなぜでしょう。
ふしぎふしぎの初みかん。
小鳥と私の初みかん 深見萩緒 @miscanthus_nogi
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