第24話
光から現れたのは神々しいオーラを纏った羽の生えた魔王と勇者だった。
そこにいた戦力として準備していた兵士と魔族皆が驚いた。
「なんで、お前が…」
「君なら…」
感動の声を戦士と僧侶が挙げる。
「魔王様…」
「何故、天より…」
魔族も口々に声を挙げる。
そんな中勇者が口を開く。
「俺たちはテメェを神として裁きに来た」
「我々の使命により貴様を処罰を下す」
勇者と魔王が空から降りながらダークロードに宣言する。
この場で1番2人の存在に驚いていたのはダークロードだった。
勇者と魔王が地に着地した瞬間に仕掛ける。
「“ダークシャドウ”!!」
なんとダークロードは得体も知れない2人から逃げる手を選んだ。
だがしかし、その手は封じられる。
「無駄だ。“ゴットフラッシュ”」
勇者が左の掌を翳すと眩い光が放たれる。その光によってダークロードの影を消される。
「なに??!!これじゃあ、ダークシャドウが発動できない!」
「お前の力はもうすでに俺らに割れてんだよ。影を使うダークシャドウ、姿を消すゴットステルス、姿を変えるゴットトランスフォーム。神の力を持つことで神にまで干渉することができる。それによって神たちは今の今までお前に欺かれ続けたのさ」
「お主の最強の逃走能力であるダークシャドウは封じた。貴様に勝ち目はない。我らは神の頼みでこの世にいてはならない因子を摘みにきた」
勇者と魔王は堂々と語る。
「な、何故生まれただけで俺は罪を被されなければいけないんだーー!!」
ダークロードは自分の秘めた心のうちを声に乗せるように叫ぶ。
それに反応して勇者と魔王は顔を少し曇らせながら次の台詞を吐いた。
「…お前には俺も同情する。だが…」
「この世界の均衡と秩序を乱す者を排除しなくてはならない。我らはその役目の任を賜った。お主には本当に悪いが役目は果たさせてもらう。恨むなら我とコクシンと神を恨むがいい」
2人はそう言い放つと構える。
すると勇者がこう呟く。
「“神器 神剣ヴァルラーマ”」
そういうと勇者の手元に光の剣が現れる。勇者はその剣を右手でおさえるようにして持った。
「“神器 神斧カルダマ、神大剣キルガー”」
魔王もそう言って神器を召喚し手に取る。
「行くぞ、魔王!」
「ふん、貴様に言われるまでもない!お主こそしっかりついてこれるか!」
2人は飛び出し、ダークロードに襲いかかる。
まず、勇者が剣を振りかざす。
ダークロードは咄嗟に反応して避ける。
だが、ダークロードの胸あたりに傷が出現する。
「な、何故?」
「避け切れたと思ったのか?」
「次は我の攻撃だ」
魔王が攻撃の構えをするとダークロードは距離を取る。
「そう来るなら、これだな。“神技 神地斬”!」
右手で持っている斧を地面に叩きつける。
するとそこから斬撃が発生し、ダークロードに襲いかかる。
その攻撃をなんとか避けると追撃の構えの魔王。
「くらえ、“神技 神空斬”!」
左手の大剣で空を切って斬撃を放つ。
地面からの斬撃を避けるために宙を浮いたダークロードに魔王は追撃をかけた。
(くぅぅ、こんなもの一撃でも喰らえばひとたまりもない!)
ダークロードは持ち前のゼロ秒反射でその攻撃も避ける。
「??あいつ、今不自然に攻撃を避けなかったか?」
「我にもそう見えた。多分、奴の持つ最高の能力であるゼロ秒反射ではないか?」
「あー神が現世に向かう途中で教えてくれた奴か」
「まあ、今の我々ならどうにかなるだろう。神の力の前では叶わない」
「そうだな。そろそろ本腰入れるか」
「そうだな」
2人は再度攻撃の構えをする。先程とは比べ物にならない程の凄まじいオーラが感じられる。
(まさか、ゼロ秒反射までネタが割れてるとは、だが、俺にはあれがある)
「俺に神に対抗できる武器がないと思ったか!先祖から受け継がれた神殺しの剣がある!出よ、“ゴットブレイカー”!!」
ダークロードの元に一本の禍々しいオーラを放つ黒い剣が舞い降りた。
「この剣は神に干渉することもできる上に神を殺すこともできる最強の武器だ」
「まさか、あやつがこんなものまで用意してたというのか?」
魔王は頭にコクシンの天才を思い浮かべた。
「これで終わりだーー!!」
ダークロードが剣を振りかざすが勇者と魔王には一切当たる気配がしない。
「な、なんで?」
「それは当たり前だろ。お前自身が強くなったわけじゃない」
「なっ…」
ダークロードはこの2人にどんな事があっても勝てない事をその言葉で悟った。どんなに強い力があっても相手に当たらなければ意味がない。それは彼が1番よくわかっている。
「そろそろ終わりするか」
「そうだな。これ以上伸ばしても仕方がない」
勇者と魔王は冷たい目と哀れみな目と悲しみの目をしながらダークロードに視線を寄せる。
「「神のスキル“先攻撃”」」
2人がそういうと技を放つ準備をする。
その様子を見てダークロードは逃げようとダークシャドウを使おうとする。しかし、勇者はその動きを見逃さない。ゴットフラッシュでダークシャドウを打ち消す。
ちょうど逃げられなくなった状態に勇者は剣技を叩き込もうと構える。
「“神技 ゴットソード”」
勇者は一瞬にしてダークロードの懐にもぐり込み重みのある剣による一撃を喰らわす。
その時、まだダークロードには意識があった。
(こんなもの俺の“ゼロ秒反射”で避けれるから意味はない!)
と思っていた瞬間だった。ダークロードが反応する前に自身の体に斬撃によるダメージの後があった。
ブシューー
(そんな馬鹿な!ゼロ秒反射で反応できないだと??!!攻撃する手元は見えていたはずなのに!!??どういう原理でダメージが!!)
ダークロードがそんなことを思いながら勇者を見ていると勇者は微笑んで答えた。
「お前、不思議そうにしてるな。俺の攻撃は1秒前に届く」
「どういうことだ!!」
「後の始末は頼んだぞ、魔王!元はと言えばお前の残した汚点なんだからなぁ!」
そう言って勇者はダークロードから離れる。離れてすぐに魔王が目の前まで迫っていた。
「“神技 ゴットアルティメットラッシュ”」
魔王の量の腕から数えられない程の攻撃が飛ぶ。腕がまるで鞭のように動いてダークロードを進撃する。
ズシャズシャズシャズシャ
攻撃は見事にダークロードに全てヒットする。
(何故、さっきから攻撃が一つも避ける事ができない。攻撃が当たると思いやっと攻撃が来たことを認識してそれに反射して避けようとするが何故かその前にはすでにダメージを負っている。反応しようとすると一瞬時が飛んで攻撃がヒットしているような感覚だ…)
「ぐはっ」
血反吐を吐きながらダークロードは吹っ飛ばされる。
見るに耐えない悲惨なほどダメージを喰らっていた。
瀕死の状態で倒れているダークロードは視線を魔王と勇者の方に向ける。
「…どういうことだ?」
苦し紛れにダークロードが掠れた声で魔王と勇者に問いかける。
「魔王、攻撃が軽かったんじゃねぇのか?こいつまだ息してるぞ」
「ラッシュ技だから仕方がない」
「なんで一撃必殺見たいの撃たなかったんだよ」
「我が最強の技は生きている時からアルティメットラッシュだったのだ。仕方あるまい」
「それは理由になってねーぞ」
「…お…い、お前ら」
2人が言い争っている中掠れた声で2人を止めるようにダークロードが口を挟む。
「なんだよ?」
「どう、やって、俺の、ゼロ秒反射を、掻い潜った…?」
「神は1秒先に攻撃できるんだよ。お前がゼロ秒で反射するならそれより先に攻撃すればいいだけの話。つまり、お前が反射で動けるのはゼロ秒までで俺たちはお前にマイナス1秒の攻撃を仕掛けていたんだよ」
「どういう…理屈だ?」
「それは俺らにも分からない。でも、何故か攻撃が皆の認識の1秒前に届いている」
「そういうことだ」
「…ふふ…ふ。なるほど」
ダークロードがダークシャドウを使って逃げようとすると勇者が光を放ち止める。
「“ゴットフラッシュ”」
「くっ…」
「お前が逃げようとしてることぐらい分かってるんだよ。魔王とどめを刺すぞ」
「ああ、これ以上は見るに耐えない。この呪われた運命から解き放ってやろうではないか」
ダークロードは天を見ながらこんなことを思っていた。
(俺は何のために生まれたのか…何故このような最期を迎えなければならないのか…)
「お前が理不尽に消されたことは俺らは忘れない」
「我々が後で神々に罰を与えておく。安心せい」
「お前が生まれてきた事自体は間違えじゃなかったって俺たちが絶対に証明してやる!」
「だから、お主は安らかに眠れ」
(ああ、ここに俺を否定しない者達がいる。俺が罠をはりそれのせいで殺された2人が俺を恨むのではなく俺の存在を認めてくれた…)
ダークロードはそんなことを思っているうちに意識が薄れていった。
魔王と勇者は片手を前に出す。
「「神の裁き“ゴットジャッジメント”!!」」
天から光が差込ダークロードの体を覆う。
光が消えたと思ったらダークロードの姿は無くなっていた。
「さーて、役目は終えた約束通りに神界に殴り込みにでも行くか」
「いいなそれは我らも中々意見が合うな」
「マジで意見だけはな。性格は全く合わねぇけど」
「勇者よ、そういう2人に亀裂の入りそうな一言は余計だ」
「繊細だな〜」
そんな雑談を2人で踏まえていると人々が寄ってきた。
「「「勇者ーーー」」」
「「「魔王様ーーー」」」
2人の近くに人と魔族が集まる。
「よう、お前ら久しぶりだな」
「お前どうやって…死んだはずだろ!」
「そうですよ、あなたの体は冷たくなっていた!」
「ごめんなさい私たち…」
「そんなことはどうでもいいだろ。俺は神になって一瞬だけこっちに来て倒さねぇといけないやつを倒しに来ただけだからな」
「あいつは?」
「俺ら2人で終わらせた。もう恐怖は去った。俺たちは天に戻る」
「おいおい、もうちょいゆっくりしてけよ」
「そうですよ」
「あまりこっちに干渉はしてられねぇんだ。すまねぇな。俺はもう行く」
「おい、勇者…」
「おっとその前に戦士お前、俺の本名心の中で言いやがったな!頑張って今まで隠してきたのに!」
「はぁぁ??お前何でそんなこと知ってるんだよ!!心まで読めるのか!!??」
「ああ、当たり前だろ!俺は神なんだから!」
「お前のくせに立派な羽なんてものまで囃しやがって伝承上の天使や神みたいじゃねぇか!」
「だから、神だって言ってんだろ」
「プププ。やはり、君たち2人の言い合いは面白いですね」
「お前も笑ってるんじゃねぇぞ僧侶。馬鹿にしやがって。俺はもう行く」
そう言って勇者は宙を浮く。
「おい、勇者元気でな」
「あの世でも無事をみんなで祈ってるよ」
「私達もそっちに行ったらお礼言うから」
「ちゃんと言うからね」
「ちゃんと待ってるのよ」
「ああ、待ってるぜ。こっちのことは任せた」
勇者はそう言って現世から去ろうとすると何を思い出したのか、天に向かうのを止める。
「あ、忘れてた」
シュッ
勇者は金髪勇者の元に飛んで行った。
「よぉ、誠の勇者様よぉ」
「ひぃぃ」
金髪勇者は怯える。
「お前が自由になりたいって言う気持ちはわかるし、お前が自由を満喫すること自体は悪くねぇ。だけどなぁ、自分が自由になるために他人に無理やり役目を押し付けたり、後になって都合の良いタイミングで勇者とか言って名乗って出てくるのはなしだぜ」
「ひぃぃ。お許しを…」
「お前に罰を与える。お前はこうなってしまった結果を自分が調子に乗ったことと親がした行為を恨むんだな」
そう言って勇者は右の掌を金髪勇者の頭に掲げる。
パリンパリン
「な、何の音だ?」
「お前のスキルを破壊した。完全鑑定とゴットホーリーブレイクの二つを」
「はぁぁ??そんな俺の特別な…」
「これから味わうんだな。特に特別でない自分をな」
「そ、そんな〜〜」
「…どうせ、これからの時代にこのスキルはいらないだろうがな」
最後にボソッと勇者は呟いた。
そして、自分の役目は思えんとばかりの笑顔で天に去っていった。
もう一方の魔王は言葉を短くして皆に想いを伝えていた。
「と言うことだがんばるのだぞ」
「はい、魔王様…」
魔族は皆泣きながら魔王の話を聞いている。
「みな、泣くな。最期は笑って送ってくれ。たしかに、我はもういなくなる。完全にな」
「「「魔王様〜」」」
「だが、これから新時代が幕を開ける。その新しい時代ではここにいるもの全てが重要なのだぞ。しっかりするのだ」
「「「うぅぅぅ」」」
「お主らで新しい時代を気づくのだ。今ならきっと人族とも分かり合える。我は死者これ以上未練を残して現世に関わるわけにはいかない。今、生きるもの者達が時代を作り、歩むのだ」
「「「はぁぁいぃぃ」」」
皆は泣きながら言葉になっていない状態で返事をする。
「それではさらば」
そう言って魔王も勇者に続いて天に去っていく。
2人は神界につく途中で合流する。
「別れはしっかり済ませたか?」
勇者がニヤニヤとした顔で聞いてくる。
「貴様と違って我は信頼されていのでな。中々皆が帰させてくれなくて大変だった」
ふっ、小馬鹿にしたような言いようで魔王は勇者に言葉の反撃をする。
「いい度胸だな」
ムカムカ
怒り浸透が目に見えてわかる勇者の表情。
「それはそうだろう。生きていた時の行いが貴様は悪かったからな」
「ほほう。火に油を注ぐとはいい御身分なことで。神界に着いたらまずはテメェからぶっ倒してやる」
「貴様如きが勝てるわけないだろ。元の強さに神の力が上乗せされているのだ。自力の差で我の勝ちだ」
魔王は得意げに言う。
「何だと〜。そんなのやってみねぇとわかんねぇだろうが!一応俺はお前に一回勝ってんだからな!」
「あれを勝利に入れるとは小物だな」
「テメェこそずっと根に持ってただろうが!」
「貴様こそいちいち発見がねちっこいぞ!」
2人は顔を擦り付けるかのようなぐらい近づけ睨み合う。
ある意味これこそが生物のあるべき姿だったのかもしれない。
この物語はここで一旦幕を閉じる。
しかし、物語の世界は人が考える分だけ広がっている。
この物語もその一つでしかない。
魔王が威張り腐った勇者を倒す話 sueoki @koueki
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作者のくだらない呟き/sueoki
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