第2話 探偵Nとの再会

 名刺に書かれたアドレスに従って街を歩いていると、大きく「成宮探偵事務所」

と書かれた看板が見つかった。ドアに手をかけた途端、中から例の男が飛びだしてきた。

「…あ」

「ああこないだの…依頼なら断るぞ?俺は別の事件で忙しいんだ」

「ああ!ちがう!その…ちょっと…話が…」

その男、成宮獅劉が首をかしげる。

「こっ…ここで働かせてくれないか…!」

獅劉は黙って数秒止まる。

そうして彼はゆっくり呟いた。

「ついてこい」

彼について事務所を出ると、彼はさっそくタクシーに乗りこんだ。

「どこにいくんだよ」

「お前はまだ採用だと決まったわけじゃない。黙ってついてこい」

まだ…なのか……しかし勝手に転がり込んどいてからに文句は言えまい。

「四谷まで」

運転手にそういうと車はすぐさま走り出す。

「今回の事件は四谷の高級マンション街、50代女性が殺された」

「こ…ころ…!?」

予想外の事件に声が大きくなってしまった。声を押し殺す。

「浮気調査とかじゃないのかよ!?」

「あのな、俺はそこらの探偵とは違う。警察に雇われてる」

怪しい。

「ほんとかよ」

「人が嘘をつくとき、人は利き手の上のほうを見る。今俺は左上を見たか?」

「知っていたら意識すれば見ないことだってできる」

「合格だ、使えなくもなさそうだな」

失礼な言い方だ。

「採用ってことか?」

「条件がある。実はいま事務所が経営難でな、お前が家を売ってその金をかしてくれるなら採用にしよう」

「とんでもなくブラックだな…」

「当分は事務所に住んでいいぞ、なんと家賃ただ!こんないい物件があるかい?」

騙されているような気さえしたが、ここしかない、黙ってうなずく。

「決まりだな」

運転手が車を止める。どうやらタクシー代も、俺持ちのようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

探偵Nの事件簿 高望み男 @takaminokenbutu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ