第3話 残された世界
やって来たのは学校の近くのコンビニ。閑静な住宅街の中にあるコンビニだ。夜はヤンキーや暴走族が集まりさぞ近所迷惑だったのだろう。しかし、既にヤンキーも暴走族もいなくなり閑静な住宅街が閑静を取り戻した。だというのに、その閑静さを感じることが出来るのは俺しかいないのだが・・
コンビニの横にはコンビニの人の車だろうか、常に停められているフォードの青いピックアップトラックが今日も停められていた。コンビニの車なら鍵がコンビニの中にあるはずだ。
取り敢えず、コンビニの中に入る。誰もいないので遠慮もせずカゴに弁当とパンとコーラを入れ、弁当をレンジで温める。未だ電気は供給されているようで電灯も付いていて、冷蔵庫も冷凍庫も機能している。いつまで続くかは不安だ。温めが完了しイートインに行く。
コンビニ弁当も賞味期限は気にしなくても数日が限度だろう。もう食べることができなくなると思うと只のコンビニ弁当も感慨深い。味は変わらないが・・でも美味しい。
焼肉弁当とコーラの組み合わせは良いが、やはり弁当には熱いお茶だなといつもの習慣が思わせる。
車が全く走っていない、人さえも誰も通らない道路を見ながら寂寞感と不安で押し潰されそうな気持ちを払拭し、今後の計画を練る。これから電気屋に行く。行って冷蔵と冷凍庫を見つける。ピックアップトラックの鍵が見つかれば運転していこう。
食事が終わり、鍵を探す。コンビニの事務所を探すと机の上にフォードの鍵が置いてあった。
車の横でキーに付属しているリモコンのボタンを押すとピックアップトラックのロックが解除され音が鳴りウインカーが点滅する。
よし、これで問題が一つ解決した。
電気店に行こう。
しかし、もう一つ大きな問題がある。
俺は高校生だから運転したことがない。
こんなことなら運転の練習しておけばよかった・・・
しかし、ある程度なら知ってる。
しかも、車の運転には自身がある。
既にかなりの時間車の運転を経験している。
ゲームの中でだが・・・
まず、ピックアップトラックに乗る。
この車は鍵を挿入しなくても良いタイプのようだ。家の車もそうだから分かる。スイッチを押す。エンジンがかかった。
オートマだからギアをドライブにいれる。
よし。後は、車のゲームと一緒だ。大丈夫だ。自分に言い聞かせる。
アクセルを踏み込む。
ギーと妙な音がする。前に進みにくい。変な抵抗があるみたいだ。
暫くそのまま進む。
可怪しい、スピードが出ない、後ろを見ると煙がモクモク?
壊れてるのか、この車?
あっ、大事なことを忘れてた。サイドブレーキ!
サイドブレーキは文字通り運転席のサイドにあった。
だって仕方がない。車のゲームにはサイドブレーキなんてついてなかったんだから・・
車は順調に動き始める。
そこの角も右に曲がる。
ハンドルを切る、切る?切る?未だ切るのかよ!?どれだけ切れば良いのかと思うくらい切ったら切りすぎた。
仕方がない。だって、車のゲームのハンドルは少ししか回らなかったんだから・・・
アクセルを踏み、ブレーキを掛け、ハンドルを切ってアクセルを踏みブレーキを掛けまたハンドルを切る。ゲームみたいで楽しい。
何とか、電気屋にたどり着いた。ここまでぶつけること数回。対向車も後続車もいなかったから事故も起こさなかった。だから辿り着けたとも言える。
電気店は開いていた。
人がいなくなったのは夜中だったのだとずっと思っていた。しかし、電気店が開いているのは可怪しい。それなら営業時間の間に人が消えたことになる。
分からないことは分からない。考えるだけ無駄。取り敢えず冷蔵庫を探さないと店に入る。いや違う。冷蔵庫のような大きな家電の在庫は倉庫だろう。しかし、型番を見るためにまずは店内だと思い直し、店内へ。
冷蔵庫の売り場に行く前にブルーレイディスクを発見。後で持って帰ろう。欲しい物がたくさんある。しかし、どれも電気がなければ始まらない。この電気屋も未だ電気が通っている。しかし、いつまでだろう。目下の懸案事項だ。
冷蔵庫売り場ででかい冷凍庫を発見。倉庫で在庫を探すと直ぐに見つかった。フォークリフトがあったので動かそうと思ったがそれで載せても一人では降ろせない。もう、この電気屋で暮らそうかと思ったがそれは嫌だし、電気がいつ来なくなるかもわからない。仕方なく少し小さな冷凍庫を車に乗せることに。それでも重くフォークリフトを使って乗せた。フォークリフトは暫く動かしていたら要領がつかめた。
疲れた。自宅へ帰って、今日は休むことにした。帰宅途中で高級住宅街を車で一周りする。するとかなりの邸宅に太陽光発電の装置があった。その中でも一番大きな邸宅いや豪邸といえる屋敷に車を止める。
鍵は開いていて、もちろん誰もいない。玄関の電灯を点けると点いた。電気は通っているが太陽光発電によるものか送電によるものかわからない。しかし、太陽光発電で電気が使えるのは間違いないだろう。この家を拠点にしょうと決め自宅へ向かう。
車が全く走っていない道路を我が物顔で下手くそな運転を続け帰宅する。
疲れたのか夜食を食べると直ぐに就寝。起きた時にはこれが夢だったのかと思うだろうと淡い期待を抱きながら寝付いた。
翌日、街の状況を確認する必要があるとフォードのピックアップトラックに乗って街を回ってパトロールすることにした。
街の中は平穏で、もう梅雨だというのに空は晴れ心地よい風が吹いている。ただ人も車もいない。隣町へと向かおうと国道を走る。
突然終わりはやって来た。
道路が突然切れていた。
車から降りると切り立った崖になっている。下まで数百メートルくらいあるのだろうか。
どうしてこうなった?何が起こった?頭の中でクエスチョンマークが乱舞する。突如パニック、過換気症候群になった。崖が何処までも続いている。まるでこの街が、この街だけが世界から取り残され、ここ以外の世界が滅んでしまったかのようだ。
出来るだけ崖に沿って移動してみた。距離にして数キロで諦めた。街はほぼ円に近い状態で取り残されたのではないだろうか。
また電気店に向かった。
ドローンで上空から確認するためだ。
電気店でドローンを探すとドローンはなかった。
ネットが使えたら探せるのに。
しかし、既に街は分断されていてネットは使えない。
それなら、どうして電気は使えるの?
もしかしたら・・・
ネットを使ってみた。
すると何故かネットが使える。
ドローン販売にこの市の名前を付けて検索してみると直ぐに見つかった。そこへGPSを頼りに向かう。
到着したその場所はビルの一階。入ると数台の高級そうなドローンがおいてある。そのうちの一台が実演機なのかバッテリーも繋げられ隣に送信機もおいてある。
簡単なドローンなら動かしたことがあるので大丈夫だろう。高級なドローンは勝手に戻ってくるし落ちないような機構があるらしいし。
スイッチを入れて動かしてみると動いた。そのまま持ち出し出来る限り高く飛ばしてみる。画像は送信機で見ることが出来る。
どんどん街の全貌が見えてくる。
遂に崖も見えてくる。
どれだけ高く上がったのだろう。
もう限界だと思われたとき街の全貌が見えた。
街は孤立していた。
孤立していたのは俺ではなく街だった。
街は丸く切り取られ沈下した街の周りから隔離されていた。
周りが沈下したのだろうか?それともこの市が上がったのだろうか。
この街の周りの人はもしかしたら生存しているかも知れない。しかし、だとしたら何故助けに来ないのか。多分街の周りにも人がいないからだろう。
俺は崖から沈下した街の周りをドローンを下降させ確認することにした。
確認した結果、そこには、街はなかった。ただ森が広がっていた。
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