第6話 爆撃はある朝突然に・・
夜も更けてきた。時間はテレビもないから時計かスマホで確認するしか無い。
「俺寝るけど亜梨沙はどうする?」
「私は、暫くネット検索していろいろ調べてみるわ。それと、夜のお相手はしないわよ」
「い、いや期待してないし・・ちっ・・」
「舌打ちしたらバレバレよ」
「だったら、その胸隠せ。目の毒だ」
「寝室は三階にあるわよ」
「あっ、そう。ありがと」
三階へ上がると直ぐに寝室は見つかった。
この寝室がマスターベッドルームだろう。十六畳位あるのではないだろうか。角部屋で東と南に窓がある。両方掃き出し窓だ。
壁紙は白基調で清潔感がある。部屋の真ん中のベッドがあり、前の壁にはまるで板の様に薄い大きなモニターが掛けられ寝ながらテレビが見れるようになっていた。
窓を開けるとベランダだ。ベランダに出るとこの部屋よりも広い。
ベランダに手すりはなく壁になっている。壁の高さは三メートルほど。ここはまるで屋根のない部屋だ。ベランダの壁に扉があったので開けてみると更にベランダが有った。やはり、ここはベランダではなく屋根のない部屋だった。この寝室と隣の部屋とそのまた隣の部屋と全てのベランダが繋がっているのでかなり広く奥行きもある。奥行きが4メートル以上、幅が十二メートル以上あるだろうか。ホテルのプール脇にあるような木の椅子が、日焼けする為だろうか、三脚置いてある。
部屋に戻りベッドに入る。リモコンが隣りにあったのでテレビを付けてみると防犯カメラのモニターになっていた。
防犯カメラは入り口とリビング、二階と三階の廊下に一つづつ。裏口、庭に四箇所、正門と裏門に一つづつ。全てが一つのモニターに表示されている。
ここは、ちょっと警戒しすぎだ。理由は色々あるだろうけど察せられる。
リビングのモニターにはまだパソコンを見ている亜梨沙が映し出されている。見ていると、亜梨沙がこちらを見て微笑む。見ていたことに気付たのだろうか?もしかするとこの部屋にもカメラが有るのだろうか?明日聞いてみよう。
照明を消すとそのまま寝てしまった。
眩しい・・
何だ?・・
目を開けると見知らぬ天井が・・
そうだ・・思い出した・・豪邸の寝室に寝ているんだった。カーテンが開けっ放しだったから眩しかった。
起き上がりベッドから出ようと横に手をつくと柔らかい感触が・・・・
亜梨沙の胸の上に手を置いていた・・・・
いつ来たんだろう。一緒に寝るのなら教えてくれてたら起きて待ってたのに。
亜梨沙が目を開けた。
「ちょっと、胸の上から手をどかして」
「はっ!ごめん。気付かなかった」
「気付いてたでしょ。セクハラ禁止よ」
「だったら、隣に寝るなよ。って、ロボットが寝るのかよ!?」
取り敢えず突っ込んでみた。
「ロボットじゃないから寝るわよ。何度も言ってるでしょ、人造の有機生命体だって」
「あっ、改造人間ね。」
「人をバッタの化け物みたいに言わないで。『変身!』とか言わないし、変身もしないわよ」
「それでなにか分かった?」
「あまり分からなかった。何が、この都市をこの世界へ連れてきたのか、どうやったのかも分からなかった」
「他に分かったことは?」
「分かったのは50の都市がこの星に集められてる。都市毎の間隔はばらばら。それぞれに武器になりそうなものがある。兵器があったり戦闘機や戦車やミサイルを有する都市も存在する。ブレデタードローンを開発しているアメリカの都市もあったわ。最強は多分中国軍の基地ね」
「どうして中国軍の基地?」
「核ミサイルがあった。しかも複数」
「じゃ、じゃあ、銃砲店の銃集めても無意味だな?」
「でも、少しでも武器を集めないとむざむざ殺されることになるわよ」
「どうして色々分かったんだ?ハッキングしまくったのか?」
「そうよ。この時代の技術なら何処にでも侵入できるわよ」
「そうか。でも、それ出来るやつ他にもいるよな、絶対」
「でしょうね」
「一番弱い所から殲滅していくかもな。一番弱い都市は何処にある?」
「ここよ、ここ。全ての都市を見てここが一番脆弱ね。武器は銃砲店のライフルだし、一番強力なシェルターは民家の地下の脆弱なシェルターだし。他の都市は弱くてもアサルトライフルよ。一番多いのはAK47ね。いいよね、手入れしなくても故障しにくいらしいし、7.62mm弾で5.56mm弾のM4なんかより強力だし」
「他の都市のシェルターはどうなってるんだ?」
「中国軍の基地のある都市には中国軍の強力なシェルターがあるわよ。多分核ミサイルでも大丈夫。100人乗っても大丈夫な物置とは一味違うわね。ミサイル100発大丈夫!って感じよ」
「あ〰〰もう俺の人生終わりだぁ!詰んでるよ。一番弱いこの都市を核ミサイル一発で終わらせるんじゃないのか?」
「ふっ」
「は、鼻で笑ったな?」
「そりゃ、嗤うでしょ? 核ミサイルなんて何発もある訳なじゃないのにこんな弱い都市に使ったらもったいないでしょ。普通のミサイルでも十分よ。ドローンが飛んできて爆弾落としていくかもね」
「だったら、お前も飛んでいって爆弾落としてこい!」
「飛べるわけ無いでしょ、人間とあんまり変わらないんだから。それに、ここには爆弾もないわよ。作れたとしても粉塵爆弾とか肥料を使った弱い威力の爆弾とかでしょ。ミサイルとかTNT火薬使った爆弾には及ばないわよ。核爆弾に至っては比べようもないし。この都市を宇宙から流星の速度で落としたら勝つかもね」
「だったら、この都市を宇宙まで持っていって・・」
「・・って誰が持っていくのよ! 出来たとしても、あなたも死ぬわよ」
「くソォーッ、どうしたら良いんだよ。本当に」
その時だった。大きな爆発音がして地震が起きた。
体感的に震度4位ありそうだ。
ベランダに出て周りを見回すとこの都市の市庁舎、つまりこの都市で一番高く堅牢そうなビルが破壊され周囲一体から煙が出ていた。
「あれは何だ?ミサイルで攻撃受けたのか?」
「そうみたいね。飛行機飛んでないから多分ミサイルだったみたい。一番頑丈そうな場所に昴が隠れていると踏んで攻撃したんでしょうね」
「あそこに居たらやばかったな」
「ん?」
「ん?どうした?」
「不味い!不味いわ!」
「ドローンが接近してる。後10キロ位しか離れてない無いわ」
「10キロあるなら余裕じゃないのか?」
「何言ってるの。アマゾンで売ってるドローンじゃなくて米軍のプレデタードローンよ。ミサイル積んでるかも知れないし。兎に角急いでバスルームに行くわよ」
「何で、バスルーム?」
「かなり精度の高い熱線暗視装置を積んでるみたい。建物の中の熱線も見えるみたいだからお風呂よ」
「一緒に入るのか?でも何でお風呂?」
「え~い、煩い!プレデター見てないの?あれみたいなものよ。水があれば水の中の熱線は水に阻害されて見えないでしょ。こんな事もあろうかと寝る前にお風呂に水張っておいたから」
風呂へ急いで到着。
バスルームは豪華でジャグジー付き。湯船も広く三畳位ありそうだ。
「早く服脱いで!湯船に入って。はい、これストロー、これで息して」
「これで息できるのかよ?って、亜梨沙は脱がないのか?」
「脱ぐわけ無いでしょ。恥ずかしいし。着替えはあるから大丈夫。早く入って。後数百メートル。もうすぐ認識圏内に入るわよ。飛んでいったら合図送るから」
「分かったよ。でも、ロボットなんだから気にせずスッポンポンになればいいのに」
「脱がないわよ。好奇心が爆発しそうな高校生の前で!五十センチ以内接近禁止!」
「いつまで?」
「ずっとよ!」
そう言うと二人で水の張られた広い湯船に仰向けに頭まですっぽり浸かりストローを出し呼吸する。隣を見ると亜梨沙もストローで呼吸している。ロボットなのに呼吸しなくちゃいけないというのは不便だ。おっと、ロボットと言うと『ロボットじゃない』と思いっきり否定するだろうな。などと考えていると、考えを読まれたのか睨まれた。
三十分くらい経っただろうか。亜梨沙が俺の肩を叩いて合図を送り水面から顔を出す。俺も続いて顔を出した。
「もう行ったのか?」
「スケベ!」
「違う、そいう意味じゃない。ドローンが去って行ったのかと言う意味だ」
「もう大丈夫。今のうちに行動するわよ。もしかしたら、この都市の物資を物色しに本人が来るかも知れないから」
「どうやって来るんだ?飛行機か?滑走路無いぞ。ヘリならどこでも降りれるか。」
「戦闘機でもVTOL機なら着陸できるわよ」
「何だよそれ?」
「Vertical Take off and Landing Aircraft の略ね。垂直に離陸して垂直に着陸も出来る飛行機ね。例えばハリアーII。最新のF35はSTOVLで垂直着陸は出来るけど離陸には短いけど滑走路が必要になるからこの都市に降りるなら高速道路とかの障害物がないところじゃないと着陸は出来ても飛べなくなるわね」
「ここから逃げる方法はないのか?」
「ヘリが何処かにあるかも。会社社長の移動用とかね。今から探しに行くわよ」
「あ! ある。ドクターヘリ! 大学病院のヘリポートにあるよ。よしヘリに乗って逃げよう」
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