第7話 仲間?
「逃げる? 逃げてどうするの? 武器がなくなって戦えず死んでしまうわよ」
何言ってるんだ、こいつは? 銃じゃミサイルには抵抗できないだろ。隠れるほかない。
「銃を持てるだけ持って持って近くの森に隠れていればいいだろ?」
「ここは電気も使えるし、ガソリンもここならあるけど、他には無いわよ。多分ライフラインは都市だけにしかない。それ以外には存在しない。それにずっと追われるわよ」
「じゃあ、戦いが終わるまで隠れていよう」
「たとえ死ななくてもこの都市が破壊されたらゲーム終了なんじゃないの?」
「いや、そんな事は言ってなかったぞ。最後に生き残ればいいと言ってた。生き残った者の勝ちだ。都市は関係ないだろ」
「そう。それで、あなたヘリ運転できるのよね?」
「何言ってるんだ。ロボットなんだから亜梨沙が運転できるんだろ、もちろん?」
「あのね、映画みたいにデータ転送で突然操縦できることなんてないわよ。スキル貰ったら突然剣が使えるようになる異世界ラノベじゃないんだから」
「じゃあ、この都市の中を逃げ隠れし続けるしか無いのか?」
「穴を掘る?」
「穴?」
「そう。ショベルカーなら何処かにあるでしょ?それで穴掘るの。防空壕にもなるでしょ。」
「下まで?数百メートルあったぞ?」
「地下鉄から掘れば早いけど。この近くには電車を地下に引き入れる線路がないから大変かもしれないけど、他に方法はあるの?」
「電線繋げたら数百メートルになるんじゃないのか。電気工事の会社にあると思うけど・・」
「数百メートルって言ったら日本一高いビルの阿倍野ハルカスが六十階で三百メートルよ。簡単には垂直の崖降りられないと思うけど。その間にまたプレデタードローンが偵察に来たら銃撃を受けてアウトでしょ」
「じゃあ、工事現場で使うようなワイヤーが沢山巻いてるウインチなら使えるんじゃないのか?」
「どうやって持ってくるの?」
「そりゃ、亜梨沙が担いで持ってくるとか?」
「私は、野菜の名前の戦闘民族じゃないよ? すごい重量だし、電力も必要よ」
「じゃあ、ヘリ運転してみよう」
「あのね、ヘリの運転難しいらしいわよ。動かし方さえ分かんないんじゃないの?例え、動かせたとしても直ぐ落下してお陀仏よ」
「じゃぁパラシュートで降りる」
「パラシュートで降りたことあるの?」
「ない。」
「風に吹かれたら崖に当たって下まで落下するわ。死んでも知らないわよ。」
「そこは、ほら、ロボットの君がやってみてやり方をスマホで教える。」
「スマホ使えるの?」
豪邸の残されていたスマホと自分のスマホで実験してみた。
すると普通に使える。電力といいネットといいスマホの電波といい不思議だ。ここに都市ごと運んだ者がその卓越した科学技術で使用可能にしているのかも知れない。
「使えたぞ。次はパラシュートを探すぞ!」
「それはいいけど・・・・どうやって上がってくるの? まさか、もうここには戻らない訳じゃないわよね?」
「・・・・い、いや、パラシュートは脱出手段だ」
「脱出する時に私が先に降りて実験する余裕なんかないと思うよ」
「う、煩いなぁ、実験は先にやっておくんだよ。亜梨沙が下まで降りたら上がってくればいいんだよ」
「どうやって? 私、ロッククライミングの技術ないし、足からロケット噴射が出て飛んで上がってこれる訳でもないし」
「うーー、でも、いざという時の為にパラシュート探すぞ。」
「穴も掘った方が良いと思うよ。まぁ、核爆弾が落ちたら、この円筒形に数百メートルの高さまで突き出た台地なんて崩れ去るんだろうけど。50ある全ての都市に撃つほど核ミサイル存在しないら安心して」
「そうだよな。防空壕が最優先だよな。よし、亜梨沙がここの地下室から更に下に掘っていけ!」
「私は、モグラのロボットじゃない! 掘れるかっ!」
「だったらショベルカー探すべきだな。それとショベルカーを乗せるトレーラー?もな」
「じゃ、直ぐ行こう。場所は検索した。早くしないと先刻ドローンで視察したやつがくるかもしれないから」
俺達はウニモグに乗りショベルカーのある工事現場へ向かった。検討した結果、トレーラーは積み込むのが難しそうだったからその工事現場を掘ることにした。その工事現場は市役所からは遠く離れ崖までも近い場所だった。
ビル群が立ち並ぶ街中を抜けると、いつもは遠くに山が見えるにも関わらず山が見えない。
暫く進むと崖が見えてきた。崖迄1キロ位だろうか。その道沿いに工事現場はあった。
工事現場には、いくつものダンプカーや工事車両がそのまま残されていて、突然働いている人がいなくなったかのような状態で止まっていた。
工事現場の敷地へ入るとショベルカーはすぐに見つかった。しかし大きすぎる。これでは大きな穴を真下に掘るしか無いかも知れない横に掘るには大きすぎで横穴は崩れそうだ。
取り敢えず、動かしてみた。穴をどう掘るかはその後だ。
鍵はつけっぱなしになっていた。エンジンをかけてみる。掛かった。
動かし方がわからない。適当にボタンを押したりレバーを動かしたりしてみる。上手くいかない。
1時間ほど経った。ずっと動かしていると少し要領をつかめてきた。未だ穴を掘るには至らない。
とても疲れた、精神的に。
「なぁ、もう帰ろうか?疲れた。」
「だらしない!」
「君は何もやってないだろ?」
「私は戦略考えてるの?」
「なぜ疑問形?」
「分かったわよ、帰ればいいんでしょ。さぁ、行くわよ。」
ショベルカーの操作マニュアルもなく暗中模索の状態が続きとても疲れた。俺達は、既に夕闇迫るこの都市の誰もいない道を制限速度も関係なくかっ飛ばして帰る。途中、パラシュートを販売している店が検索で引っかかったので無料で購入して再び帰路についた。
それは、豪邸へ後1キロほどのことだった。
「待って!車を止めてっ!」
豪邸の近くまで来ると亜梨沙が車を停車させるよう怒鳴る。
「何だ、どうした?」
「あの豪邸、灯りがついてた。」
「消し忘れたんじゃないのか?」
「あそこほぼ自動よね。手動のは消してきたし。誰か居るわ。」
俺達は車を数百メートル程手前まで移動して停車し歩いて豪邸に近づいた。
豪邸が見える近くまで近づいたところで気付いた。豪邸の門の前に人がいる。二人。
二人とも銃を持っている。
俺が集めた銃だろう。
直ぐに建物の陰に隠れる。見つかってはいないようだ。建物を見回していると三階のベランダに人が出てきた。
男と女だ。
全員で何人いるんだろう。外人だろうか。この都市にいた人の場合、友好的なら仲間に入るか。友好的でないなら逃げるべきか。まさか、この都市の人間なら敵対する事はないが、他の都市の人間なら殺される可能性もある。ミサイルを撃った都市の者だろうか、それなら、逃げるほかない。
「なぁ、どう思う?」
亜梨沙の考えを訊いてみる。
「微妙。言葉を聞けばわかるけどもしかしたら中国人かもしれないし、日本人でも他の都市の人間なら殺されるかもしれないし。」
あいつらは俺が集めた沢山の銃を持ってる、しかし、俺が持っているのはたったの二挺だけ。弾も少ない。
「分かったわ。あいつら日本人よ。」
「どうして分かったんだ?」
「口の動き。この都市の別の場所に居た人達みたい。多分大丈夫よ。」
「よし、話しかけてみるか。」
俺は敵意がないことがわかるように笑顔で近づいた。ライフルは車に置いてきた。まさか、これから味方として別の都市の人間と戦うのだから大丈夫だろうと甘く考えていた。
「こんばんは。」
「何だ、お前は?」
彼らは俺達を訝しみ銃を向ける。見た所まだ若い。大学生くらいだろうか。来ている服も若い。どう見ても真面目な好青年には見えない。ギャングにしか見えない。
「この都市の者だから仲間ですよ。」
「何で、この都市の者が仲間なんだ?俺達の仲間はこの建物の中にいるぞ。」
こりゃ判断誤ったかと考えていると豪邸の中から先程三階のベランダに出てきたやつが出てきた。
厳つい顔に鋭い眼光で俺達を睨みつける。どう見ても一般人じゃない。手にはショットガンを持って既に構えていて銃口を向けている。
「この銃はお前が集めたのか?」
こいつがギャングのリーダーだと思われる。鋭い眼光を向け低い声で俺達に問い掛ける。
「えー、そうですよ。これからの戦いで必要でしょ。」
「なんだ?俺達と戦うつもりだったのか?殺すぞ!」
「いや、脅さないでくださいよ。他所の国との戦いですよ。」
「はぁ?お前危ないやつだな。銃を集めて他所の国と戦争するつもりだったのか?」
微妙に話が噛み合ってない。もしかして、昨日のネット見てなかったのか。
「おい、こいつロープで縛って中へ連れてこい!」
ヤバイ、彼女は強姦されてしまう。ロボットだと自分では言っているが本当は人間なのに。ロボットのふりをしていれば犯されないと思っているか。こいつらなら、ロボットと言っても犯すだろう。大丈夫か、と言おうとして振り向く。
既に彼女はいなかった。いや最初から来てなかったのかもしれない。
安堵のため息が漏れた。
俺はロープで縛られた上に銃を突きつけられて建物の中へと連行されていった。
ペテルギウスファンタジア 諸行無常 @syogyoumujou
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