日常のさり気ない一コマ、誰もが経験する可能性のある時間をとても丁寧に描いた小説です。主題歌となる明るい音楽が流れ出して、長靴をはいて水たまりを踏んでみたくなるような、優しく鮮やかな短編でした。
浮かぶ情景が美しく、優しいのが印象的でした。なんてことない出来事も、やるせなさも、心の持ち方とふとした出会いが特別にする。そんな瞬間の物語です。
中に入る前に傘立てに入れたはずのビニール傘がなくなっていた。こんな経験をしたことがある人は多いことでしょう。自分の傘が盗まれて佇んでたとき、「あの、よかったら私の傘に入りませんか?」素敵なお話でした。文章のタッチもいいです。終わりかたもよかったです!
傘を軸にしたお洒落なお話。どの世代にも当てはまる普遍性(?)を持っている反面、どこかレトロな演出も嫌味がなくて良い。 雨の日にふさわしく、しっとりした情緒が味わえる。 詳細本作。
雨が持つ特有の感覚を呼び起こす性質。傘というアイテムが持つ不思議な効果。雨と傘、当たり前のようでいて、組み合わさるとなにかの効果が生まれるような。それが相合い傘ならなおさらで。どこか、はずむような読後の感覚。雨は憂鬱だけを運ばない、傘はわずらわしいだけじゃない、そんな気にしてくれる掌編です。
何気ない日常の中ではじまる淡い恋の物語。主人公の目線から見たヒロインは、上品で魅力的で、読んでいる私もときめいてしまいました。あえて派手な演出を避けることで、日常の中で目覚めた恋を、繊細かつ見事に表現していると感じます。日々を送る中で忘れ去っていた、かけがえのない気持ちを思い起こさせてくれるような、素敵な物語でした。少女漫画好きの方におすすめしたい一作です。
落ち着いた筆致によって背景がしっとりと作られています。太陽が隠れているのに、行く先が明るくひらけます。悪い天気も良いものだな〜と思ってしまう、心地よい作品です。
主人公の心の動きが丁寧に書かれていて、とても暖かな気分になりました。出会いを通じて、主人公が日常に新たな視点を獲得しているのが素敵ですね。また、雨の日の描写も美しく、二人が傘をさして歩く姿を想像して心ときめきました。読後感が爽やかな作品です。
この作品の読みどころは細かい描写にあります。美しくて、甘い。甘美という2文字で表すのが勿体ない。そして、口当たりがしつこくない。描写に力を入れすぎると話がつまらなくなってしまうという欠点をしっかり意識してあり、スラスラ読める。これぞ、純文学かなと思わせる作品です。素晴らしい!!この作品はきっと、「あなた」を純文学の世界へ誘ってくれるでしょう。
ちょっとイヤな目にあった時。人の優しさが、より沁みますよね。こちらのお話では、手を差しのべてくれた女性のひと言ひと言が、さりげなく前向きな言葉で、とても好感が持てます。ふたりの会話と空気感は、〝恋愛〟であり。〝現代ドラマ〟であり。〝文芸〟でもあると感じます。雨の雫と、はじまりの音。あなたも、この温かく甘やかな世界に誘われてみませんか?
短い文章なので、キャッチコピーで説明終了です。全体的にセンスがよく、それに嫉妬しますねー嫉妬です嫉妬。何度も読める作品です。