春
○月✕日
君が亡くなってからすぐに君からの手紙を君の家族から渡された。でもなかなか決心がつかなくてしまってたんだけど今日読むことにしたよ。君から手紙をもらったことなかったから読むのがちょっと怖い。だけど受けとめる準備はできてる。深呼吸して封を切った。
愛する君へ
やほー!これを読んでるってことは私死んじゃったかー!ありゃりゃー頑張ったんだけどねー。
これを書いてるのは病院に入院してから!突然死ぬことあるかもって自分で思って書いてるの。君のことだから「僕はもっと君にできなかったのか。」とか思ってるんでしょ?ドキッとした?(笑)君のことはなんでもお見通しなのだ!
私はいつもは死ぬつもりなんてさらさらないし君だって死んじゃうなんて思わないだろうからこの手紙を君と笑ってみれる日が来るのが1番いいのかなって最初は思ってた。でもそうじゃないと思うの。だって私にとって君と一緒に居れた事実そのものが最高だから。
欲張るとキリはないけどいつ死んでも幸せって思えるくらい生きれたからいいの。君と出会ってから婚約するまで沢山色んなことあったね。初めてデートしたときのこと、ホラー映画を見て2人ででっかい悲鳴をあげたこと、君がプロポーズしてくれたときのこと、君と公園で1日喋って日が暮れちゃったこととかね!
私、忘れられないのが私が大遅刻したときのこと。さすがの君も怒るだろうなって恐る恐る行ったのね。でも君は私を見つけると駆け寄って「無事で良かった。」って言って抱きしめてくれたんだよねー。もうその前からずっと好きだったけどこの人と死ぬまで傍にいたいって強く思ったのはそんときからかな。その後も君は責めないで「安全第一!」って言ってくれたよね。
そんな君と出会えて私は本当に良かった。
確かに人から見たら若いからもったいないなんて思われるかもだけど結局私の人生は私のものだから意味は自分で付けるから。だからそれは君にも譲れないの。意味不明っていう君の為に言うと(ふふっ特別よ!)私のことは私に任してってこと!私が最後どう思ってるかなんて君にはわかんないでしょ?だからそれは私のことだから僕は僕のことをって思って欲しいの。だから君は生きていてくれればいいの。時には悲しくても辛くてもいいの。苦しくて泣いてもいいの。
でも忘れないで。もう今は身体は傍にいることはできないけど君のことを想う気持ちを残しておくからさ。君のことを悪い縁とか悪霊とかぜーんぶの悪いことから守るからさ!(あ、今笑ったでしょ!?)私を忘れるくらい楽しいことしてよ。今ちゃんとご飯食べてる?ちゃんと外に出てる?寝る前はお風呂に入って歯磨きするんだよ?ああもう生きていてくれればいいって言ったけどついつい気になっちゃう。付け足し!元気に生きて欲しい!だからもうちょい心配をさせて。苦しいときは周りに頼って。泣きたい時は泣いて。色んな人と沢山関わって。それで私にこだわらず素敵な彼女を見つけてね。君は私お墨付きの最高の男だから心配しないで。ゆっくりでいいの。君なりに一歩ずつ進んで。歴史に名を残す偉業を成し遂げなくていい。テレビに出るくらい有名になんなくていい。生きてくれればそれでいいのよ。それだけでいいの。ごめんね。最後まで傍にいてあげられなくて。ごめんね、本当にごめんね。そしてありがとう。愛してる。では君の幸せを祈って.......。
世界一幸せな人より
○月✕日
僕は手紙を読んでから必死に生きた。
君は、君を言い訳にして生きるのを辞めようとしてた僕を見抜いていたんだね。
君の時が止まった冬を何度も超えて春を迎えた。
最近君が好きだったギターを始めたんだ。音楽を通じて色んな人と関わるようになったよ。まだまだ人見知りは治らないけど皆んな優しいから慣れるまで待ってくれるんだ。沢山の人と関わることで新しい自分を発見したり考えが磨かれたりするんだ。本当に楽しい。いつか君が好きだった曲メドレーができるように頑張ってる。
外出もしてるよ。やっぱり君のことは思い出すけど気持ちは穏やかになったよ。懐かしいなーってなる感じ。
君の言う通りどんなに仕事や趣味が忙しくてもご飯をちゃんと食べるし、寝る前はお風呂に入るし歯も磨く。人に頼るのはまだまだ下手だけど前よりはだいぶ頼れるようになったし、泣きたい時は泣くよ。
でも一つ君との約束を破った。彼女を新しく作ることは無理だったよ。君みたいに素晴らしい人はいないよ。そもそも僕みたいな人を拾ってくれるのは君くらいの物好きさ。でも心配しないで。心の中に君が生きているから僕は1人じゃない。それがわかったんだ。これは君にも発見できなかったことじゃないかな。君に最後まで心配かけた分しっかり生きるから傍で見守っていてよ。
今日も僕は僕の人生を生きる。
君と2人で。
君は冬で立ち止まり、僕は春を歩き始める。 おきた狂 @Soms-05
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