栄誉のために、駆けて翔べ! 絶望からの再起を目指す、竜レースの物語。

天才的なセンスを持つ竜乗りの青年と、賢く悪戯好きな漆黒の竜、二人のため尽力する健気な女性調教師。
この関係を軸に描かれる、ドラゴンレースの物語です。

冒頭から落ちぶれた状況にある主人公のグレンは、生まれながら脱落者の烙印を押された漆黒の竜に出会う。過去の後悔と絶望を背負うグレンにとって、その出会いは運命的でした。
彼らを引き合わせた女性調教師のジュナとともに、ドラゴンレースへの再起を目指して訓練を始めるのですが……。

ファンタジーにおける幻獣的な竜よりも、この物語の竜たちは生物的で現実的です。私は詳しくないのですが、競馬やF-1のようなレース物のテイストのようにも思いました。
憧れと才能だけではどうにもならない、竜牧場やオーナーとの兼ね合い。体力配分や体格に合わせた戦略なども丁寧に描いており、それが物語に面白さと興味深さを添えています。
彼が落ちぶれる切っ掛けになった事故や、その顛末にも謎が残っていて、ついつい先へ先へと読み進めてしまいます。
竜を扱うことにかけては天才的なのに女性の心の機微にはとことん不器用なグレンと、素直で頑張り屋ジュナとの関係性も、先が気になるところ。

埋もれるにはもったいない、面白い作品ですので、この機にぜひご一読ください。

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